「ミスコミュニケーションは、『このくらいならわかるだろう』と端折った部分が実は相手にはわからないというギャップで起こります。直接の知り合いとLINEをする分には端折っても伝わりますが、知らない相手へメールをするときにまで会話的なコミュニケーションを持ち込んでしまうケースが見られます」

 その傾向は若い世代ほど強い。石黒教授は子どもたちへの作文指導についても研究しているが、短文型コミュニケーションの弊害が見られるという。

■文章力=仕事力

「高校生くらいの子を見ていると、書ける子と書けない子の二極化がかなり進んでいます。SNSやLINEなどでのやり取りが一般的な彼らは、文章を書く機会自体は以前より増えているはず。しかし、短文型に慣れすぎて断片的な表現でしかやり取りできず、論理的な説明に苦労する傾向を感じます」

 SNSの累計フォロワー80万人を抱える精神科医で作家の樺沢紫苑さんにも、ロジカルなメールを送るべき場面で友人にLINEをするかのような連絡がくることがあるという。

「私は複数のコミュニティーなどを運営していますが、一言『退会したいです』とだけ連絡をしてくる人がいる。その人が誰かも何から退会したいのかもわからないので『どのことでしょうか』と聞き返すなど、双方に余計なやり取りが発生しています」

 樺沢さんは伝わる文を書ける、文章をコントロールできる人は仕事のできる人だと断言する。

「意図した通りに伝わる文章を書けるということは、思っていることを言葉にする力がある、アウトプット力があるということ。会議や商談のように会話でコミュニケーションする際も論理的に発言できるでしょう。言いたいことを整理してまとめ、相手に伝えるアウトプット力は仕事力そのものですから、文章力を磨くことは仕事力を鍛えることだと言っていいでしょう」

■「当たり前」を裏切る

 では、「伝わる書き言葉」を磨くためには何をすべきだろうか。石黒教授がすすめるのは文章を届ける「宛先」と「目的」を明確にすること。

「文章の基本は誰に何を伝えるのか意識すること。上達には書く習慣が欠かせませんが、書く際に具体的な読み手をイメージしましょう。誰が読むのか、何のために書くのかわからない読書感想文では意味がない。親しい人にぜひ読んでほしい本の書評を書くとよいでしょう」

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