一回使っただけのものはほかにも。彼女は便利グッズや目新しい物がすぐ欲しくなるタイプで、電子書籍専用タブレットもその類い。送料無料になる金額まで買い込んだ、来月が賞味期限のくるみやスライスアーモンドの大袋は、いつか使うからと多めに買ったものたちです。

「どうせ、効果ないんでしょと思いながら、購入ボタン押しちゃんですよね」ってコメントと一緒に、継続購入でたまりにたまったダイエット食品の写真が投稿されたときは、「ウチにもある」「同じメーカーのある」などとコメント欄が盛りあがりました。

 ある日の彼女の投稿です。

『ケチャップも、
ドレッシングも、
そんなストックいらないよね。
だって独り身だもの。
By◯◯○
ストックの買い方見直します』

 ネタにしながらどんどん手放していきました。自分にいま何が必要なんだろうと問いかけながら。帰ったら今日は何を捨てよう?と考える時間が楽しかったそうです。

 キッチンの洗いおけ桶。実家のマネして置いていたけれど、自分にはいらない?と手放したら、ご飯を作る間に洗い物まで終わった。前だったらあり得なかったと、彼女は少しずつ自信を取り戻していきました。なんと、気がつくと背まで直っている。胸を張って、姿勢良く歩く自分に気づいたのでした。

 不用品を処分して、ものの住所を決めて収納し、キッチンもすっきりと片づいたころ。時短料理のプログラムで家事力を底上げします。仕事に家事に忙しい皆さんがもっとラクをするために、食材の保存から下ごしらえ、時短レシピなどをお伝えしています。

 お菓子作りは趣味だけど、料理はそんなに好きではなかったという彼女。レシピにあった小松菜を人生で初めて買って料理をしてみた。「何か、料理楽しかった~」と、新たな楽しみを発見してくれました。

 ものはたくさん出てきたけど、彼女の部屋のBefore/Afterに劇的な変化はありませんでした。変わらないから逆に心配。誰が見ても片づいた状態にしなくては、と不安な気持ちになっていた彼女に、私も受講生みんなも「これでOKだよ!!」と伝え続けました。そうすることで、“もともと結構片づけられていたのかもしれない”と自分に自信が持てるようになりました。

 自信がついた彼女は、恋の片づけにも取りかかります。ゴールのなかったマラソンに、自分からタイムリミットを設けたのです。プロジェクト終了までに、彼が結婚を決心しなかったら、今度こそ別れましょうと。

 実は彼女、それまで彼に何かを指示したことがありませんでした。いつだって彼に上から言われる立場だった。マウントを取られるばかりのアンバランスさがおかしい、と思えて反撃できたのです。大きな一歩でした。

 案の定、彼は期限までに決められず、お別れすることになりました。彼女はもう、彼と付き合いたいとは思わないそうです。自分はどうしたい?これ未来へもっていきたい?と問いながら余分なものを手放したら、胸を張って「これは過去のものにしたい人間関係だ」とサヨナラできたのでした。

◯西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・夫婦間のコミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト®」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。ラジオ大阪「西崎彩智の家庭力アッププロジェクト」(第1・3土曜日夕方)が2021年5月1日からスタート。フジテレビ「ノンストップ」などのメディアにも出演

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