5000件に及ぶ片づけ相談の経験と心理学をもとに作り上げたオリジナルメソッドで、汚部屋に悩む女性たちの「片づけの習慣化」をサポートする西崎彩智(にしざき・さち)さん。募集のたびに満員御礼の講座「家庭力アッププロジェクト®」を主宰する彼女が、片づけられない女性たちのヨモヤマ話や奮闘記を交えながら、リバウンドしない片づけの考え方をお伝えします。
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case.4 本当に捨てたかったのは、未来が描けない彼との関係だった
東京都在住/独身/介護士
昨年の今ごろ、40代の独身の女性が家庭力アッププロジェクトに参加しました。彼女には物をため込むクセがありました。調味料のストックや「こんなに使う?」っていうくらい大きい製菓材料の袋から、過去に参加したマラソン大会のTシャツまで。どの収納の中も在庫過多なのに、「◯◯円以上で送料無料!」のキャッチコピーにすぐ飛びついてしまう。
ただ、物が多いとは言っても“汚部屋”ではありません。床に物が散乱しているわけではなく、ちゃんと収納棚にしまわれている。「片づけができるようになりたい」と言うのですが、実際はそれよりも、自分に自信が持てないようでした。
今回は、汚部屋の片づけとちょっと違います。ある女性が自分の生き方に片をつけたお話です。
彼女には、くっついたり別れたりを繰り返して、7年間お付き合いしている彼がいました。彼女は自分を結婚相手として選んでほしい。でも、彼は決断してくれない。「じゃあ別れましょう」とお別れするけど、しばらくすると彼から連絡があってヨリを戻す。このくり返し。
結婚について話し合うとき、彼はなんだかんだと結婚できない理由を並べます。その度に彼女は努力するけれど、「こうじゃない」「そうじゃない」と一度も認めてくれなかった。理想のお相手は「自分じゃない誰か」みたい。ゴールのないマラソンを走っているような気分でした。
「うすうす、愛されていないとわかっているんです。彼と結婚しても幸せになれないと思ってはいるんです」と、手を放したい気持ちもありました。
サヨナラしたいけど、この先、新しい誰かと出会える保証はない。7年という時間の重さや一人で生きていく不安。ほれた弱みや、今度こそ彼が認めてくれるかもしれないという期待。収納棚にストックされたナッツみたいに、心にいろんなものをため込んで、先に進めませんでした。
片づけコンプレックスも彼の影響。付き合い始めの頃、一度だけ、「片づいてないから」と彼が家に来るのを断ったことがありました。以来、「片づけられない女」と言われるようになったとか。
片づけているつもりなのにどうすればいいんだろうなぁ、とモヤモヤしていたとき出会ったのが、家庭力アッププロジェクトでした。片づいた部屋を見せて彼に自分を選んでもらおう。これで最後、と決めて挑んだのです。
プロジェクトではまず最初に、物の絶対量を減らすために不用品を家の外に出していきます。「要る・要らない」を決めるのがしんどいわけですが、手がかりの一つが「これ未来へもっていきたい?」というワード。この言葉で自問自答しながら仕分けていけば、いま必要な物だけが残っていきます。
受講生のFacebookグループには、手放す前の不用品の写真が、「#こんなもの出てきた」のタグと一緒にどんどん投稿されます。
彼女の収納からは、一回しか使わなかった大きな精米機が出てきました。玄米が日持ちすると聞いて30キロ買い込んだときに、一緒に買ったもの。結局、食べ切るのに2年もかかって、大量買いはやめたのでした。