「『最近どう?』と聞かれると『おなかが重くて、腰も痛くて、尿漏れも始まっちゃって』という感じで気軽に話していましたね。学校の授業では妊娠・出産について、習う機会がありますが、尿漏れについては教えられないことがほとんど。お互いの体の違いについて知ることは、男女間の理解を深めることにもつながると思っています」

 ただし、関根さんは、誰もが無理に経験を話す必要はないとも言う。

「今はネット社会ですから、SNSやブログをちょっと検索してみるだけでたくさんの尿漏れ体験談がヒットする。そうしたものを読んで『症状に悩んでいるのは自分一人ではない』と気付ければ、少し心が軽くなる場合もあります。それぞれ、自分に合った対処法を見つけていただくのがいいと思っています」

 製品やトレーニングを試しても改善が見られない場合は、専門機関を受診してみよう。関根さんはこう続ける。

「専門家に話を聞いてもらうと楽になれます。たくさんのケースを見てきたお医者さんや助産師さんからすれば『あるある』ですし、個別の事情に合わせた改善策も教えてもらえます」

 獨協医科大学排泄機能センター主任教授の山西友典医師によれば、過活動膀胱(ぼうこう)には膀胱の収縮を抑える薬を用いた治療が有効という。

「薬だけで完全に漏れない状態まで持っていける方は約5~6割。尿漏れを完全には止められなくとも、ある程度のところまでであれば生活に困らなくなる。診察時にその方のライフスタイルや目標をお伺いしています」

 症状が重度の場合は、手術という選択肢もある。

「かつて、女性の腹圧性尿失禁手術はおなかを一度開けたあとに糸をかけて膣を引っ張り上げるようなものが中心でした。しかし今は、尿道の裏にテープを通して固定することで漏れを防ぐという簡便な手術も出てきています。治せる見込みがあると知り、泌尿器科を受診する人も増えました。『勇気を出して』なんて考える必要もない。一度かかってみるか、くらいの気持ちで足を運んでいただけたらと思っています」(山西医師)

 尿漏れは世代を問わず、誰にでも起こり得る現象だ。正しい知識を持ち、いざ「そのとき」が訪れても、温かく迎え入れて対応したい。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2021年7月9日号より抜粋

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