生活で使う電気はすべて、庭先にしつらえた架台に載せたソーラーパネルでつくる。太陽光が生み出した電気は蓄電池にためておき、夜でも、曇りや雨が続いたときもクリーンなエネルギーとして使うことができる。
お湯は太陽熱温水器でつくる。太陽の熱でじわじわとあたためた水は100度近くにまで上がることもある。お天道様の機嫌が悪い時のために薪ボイラーも用意した。庭の薪をボイラーにくべて火をつければ、貯湯タンクの水があたためられる仕組みだ。それまで使っていたプロパン会社との契約は解除した。月の基本料金が3千円近くかかっていたが、これもゼロになった。暖房はエアコンの他に薪ストーブを使う。
再生可能エネルギーを自給し、生活すべてをまかなう家、だからエコハウスを名乗る。
原油のようにタンカーで運んでこなくても、契約を交わさなくても、基本使用料を払わなくたって、太陽という膨大なエネルギー源は毎日顔を出してくれる。それが誰ひとり分け隔てなく降り注いでいる平等さがすがすがしい。森や山を切りひらかなくても、庭先のソーラーで電気の自給はできるのだ。
有限の資源を使ったり、多くの人や自然にダメージを与えたりしながらなお、稼働を続ける不完全なシステムではなく、頭上にある太陽という無限で力強い仲間と関係を結んだ安心感と爽快感は大きい。
■きっかけは原発事故
エコハウスを志向したそもそものきっかけは、福島で原発事故に遭ったことだった。地震・津波という天災より、被災者となったぼくを精神的、肉体的に苦しめたのは原発事故という「人災」だった。人が人の利便のためにつくったはずの人造物で、多くの人や自然が痛めつけられ、平和なくらしが奪われる。考えうる限り最も皮肉で悲惨な現実を、福島で目の当たりにしたショックは大きかった。
不健全なシステムから脱却し、多くの人が安寧な暮らしを送るためになにができるのか。まずは電気をじゃぶじゃぶと使っていた自分の足元からくらしを改めるところからだった。