原発事故後に5アンペアで生活してきた記者が八ケ岳南麓にエコハウスをつくった。再生可能エネルギーを自給し、すべてをまかなう暮らしを報告する。AERA 2022年12月12日号より紹介する。
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八ケ岳の朝は外気温が5度を下回るようになってきたが、家の中は無暖房でも22度をキープして、ぽかぽかとあたたかい。窓際にいても寒いと感じることはない。結露もない。
約35畳の家全体の冷暖房は6畳用のエアコン1台でまかなう。冷蔵庫も電子レンジも使う。けれど毎月の電気代は0円で、ガス代や灯油代の支払いもない。八ケ岳の南麓で、光熱費0円の快適なカーボンニュートラルのくらしをしていて──。
「なに言ってるの?」
ここまで話すと、けげんな顔でそう言われるのにもだいぶ慣れてきた。「意味がわからない」と言われたってへっちゃらだ。意味がわかるようにきちんと説明すればいいんだから。
これは空想話でも夢物語でもない。光熱費0円のくらしは、山梨県北杜(ほくと)市でつくっているエコハウス「ほくほく」の2022年秋、現在の姿である。普段は東京に生活と仕事の拠点があるが、少しでも時間が空けば、自然に恵まれた八ケ岳のふもとへと向かう。東京と山梨の2拠点生活だ。
生活に必要なエネルギーを、電力会社やガス会社に依存することなく、すべて自給自足したい。しかも快適に暮らせる家をつくりたい。そう考えて、2017年に空き家を山梨で手に入れた。それから5年あまり、本気で家づくりに取り組んできた。記者だから記事に書くためのネタづくりだろうと言う人がいるがそうではない。自分がお金を出し、会社の誰からの指示も指図も受けず、すべては自分の意志で。だから本気なのだ。
■無限で力強い太陽
どんな家ができたか紹介しよう。「ほくほく」の断熱・気密性は北海道基準を超えて、国内でもトップクラスの性能を持つ。冷気が最も入り込んでくる窓は、国産のトリプル木製サッシやペアガラスの内窓をいれて徹底的に防御した。おかげで、外が零下10度になっても窓際が寒くない。これには驚いた。当たり前だと思っていた常識が覆されるのは楽しい。