土石流が流れた現場=静岡県熱海市/撮影・西岡千史
土石流が流れた現場=静岡県熱海市/撮影・西岡千史
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土石流が流れた伊豆山の中腹あたり=静岡県熱海市/撮影・西岡千史
土石流が流れた伊豆山の中腹あたり=静岡県熱海市/撮影・西岡千史

 3日午後4時すぎ。熱海駅前にはタクシーを待つ人が列を作っていた。

 駅周辺は大きな影響を受けておらず、記者は海寄りの国道135号を北に向かって歩いた。2キロほど行くと、土石流が国道に流れ出ているのが見えた。土の匂いが立ちこめ、流されてきた土砂と破壊された家屋が道路を寸断していた。

 土石流は国道の北西側にある伊豆山から流れてきた。中腹あたりまでの傾斜地には住居が連なる。急な坂道を登ること約30分、中腹部の被災地が見えてきた。電柱や鉄塔はなぎ倒され、電線がクモの糸のように散らばっている。周辺住民は避難しているため、人の気配はない。道路が1メートル以上えぐられている場所もあり、土石流の勢いを物語っていた。

「友達が一人で家に取り残されてるんです。お願いだから行かせてください!」

 近くで、高齢の男性と女性が救援部隊で来た警察官に詰め寄っていた。熱海市内に住む84歳と79歳の夫妻。2人によると、77歳の友人が、足が悪く、避難できずに自宅で一人でいるという。夫妻から手書きの地図を見せられ、住所を知った警察官は、「ここから東側の道路は危険なので、絶対に行かないでください」と念を押し、通行を認めた。

 夫妻に同行し、車で友人宅に向かった。約5分後、友人宅前に着くと、杖をついた友人が玄関から出てきた。こわばっていた顔が笑顔に変わった。友人はほっとした様子で「ありがとう」と言うと、夫妻は「良かったー、早く乗って」と声をかけた。

 友人宅は、土石流の発生した場所から200メートルほどしか離れていない。しかし、土石流には気づかなかったという。

「急に停電になってテレビも消えたから何も知らなかったんです。友人から電話がかかってきて『あなたの所すごいことになってるわよ』と言われ、びっくりしちゃって」

 同居する子どもは、少し離れた町に出かけていて戻って来られなくなっていたという。

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数百年スパンで土石流は起きていた?