だが実は、リーダーが全力を尽くし準備をしてきたうえで露呈してしまう弱さは、周囲の意識の中にリーダーに対する“特別な感情”をつくりだす。
舞台『ボクの妻と結婚してください。』で共演した女優・木村多江氏も同じような経験をしている。
初日、最初に内村が舞台に登場し、その後、木村氏が登場することになっていたが、内村のあまりの手の震えに、木村氏は自らの緊張が吹き飛んだと。
「“一緒に乗り越えましょう!”という気持ちになりました。内村さんの弱い部分を目にして、助けてあげたいというか、自分も最善を尽くすことで緊張をほぐして、一緒に乗り切ろう、と思いました」
「完璧タイプ」のリーダーは一見、最強にも見える。だが、リーダーが完璧な存在であればあるほど、部下や後輩をはじめ周囲の人間がリーダーにただ「付いていくだけ」という状況を作りかねない。
自分が頑張らなくても、リーダーさえいればこのチームは大丈夫だと思えば、人は無意識のうちにアクセルを緩め、必要以上にチームに対して貢献しなくなってしまう。
しかし、その人物が「弱さ」を持ちあわせた人間であれば、その周りにはおのずと「助けてあげよう」という“幇助精神”が生まれる。そして、この精神こそが、リーダーが周囲の人間を動かしてしまう原動力の正体。
もっとも「弱さを隠さない」という姿勢そのものが、万能なのではない。誰よりも汗をかき、ひたむきに努力をし、そして他者をさげすまないリーダーが、虚勢を張らず弱さもしっかり見せることが、チームを動かす幇助精神をつくりだす。
そうした条件がそろってはじめて、「弱さを隠さない」はリーダーにとって重要なパーソナリティーとなりうる。すなわち、すべてを背負ってくれているリーダーが、実は裏ではぶるぶると震えているからこそ、そのリーダーのために「自分は何ができるのか」をチームメンバーが真剣に考えるのだ。
さらにスタイリストの中井綾子氏は、肩書の上下問わず、どんな立場の相手にも自身の弱みを見せられるのが、内村の“独特の武器”だと指摘する。