内村光良は、人間的な隙を隠さずに見せる。いわゆる、つっこめる「隙」だけでなく、ややもすると仕事に悪影響が出そうな「弱さ」すら、すべて見せてしまう。
理想の上司ランキング、男性部門で5年連続1位のウッチャンこと内村光良の“上司力”に迫った書籍『チームが自ずと動き出す 内村光良リーダー論』(朝日新聞出版)。関係者への取材を重ねた著者の畑中翔太が、リーダー内村を分析する本連載。
第18回目のテーマは「弱さを隠さない」。
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内村が「人を動かすリーダー」たるゆえんは、人間としての「弱さ」が、ときに意図せずにその背中から垣間見えてしまうところにあると筆者は考える。NHK『LIFE!』のコントの一環で、実際に放送される歌謡コンサートに、内村演じる売れない歌手が、飛び入りで本当に出演する企画があった。
会場の観客はほぼ全員、その歌手のキャラクターを誰も知らない、完全にアウェーな状況。ステージに上がる前、袖で、内村は恐怖と緊張からえずきが止まらず、ハァハァ言いながらうろうろしていたという。
共演者の塚地武雅氏はこう語る。
「内村さんはちゃんと緊張するんです。あんまり言うと営業妨害になるかな、というくらい緊張する。けれど歌いだした途端、会場を一瞬で味方につけて、歌い終わりは拍手喝采。あれだけえずいてた人が、ようやりきったなと。舞台袖で内村さんを見守るマネージャー役だったんですが、本当に涙が止まらなくなって。この人はすごい、と心から感動しました」
この話を聞いて筆者が一番驚いたのは、芸能界で長いキャリアを持ち、これまで多くの大舞台を経験してきたはずの内村が、いまでも舞台裏では「ちゃんと弱い人間」であること。
これまでのリーダーたちは、リーダーの仕事に対する不安やプレッシャー、緊張などが隠しきれずダダ漏れになってしまうと、部下や後輩にその不安が連鎖し、チーム全体の機運が下がるのではないかと考え、それをひた隠しにしようと強がり、虚勢を張ってきたのではないだろうか。