療養中は保健所の担当者が毎日、電話をくれた。朝夜の体温と血中の酸素値の確認、その他、症状が出ていないかを聞かれる。口調も優しく、とても丁寧だ。電話の向こうで、忙しさに耐えているのだろう。
ハンドブックにも書かれているが、当然ながら外出してはいけない。酒もたばこも厳禁だ。
ただ、入浴は自由で食事制限もない。こまめに換気をしつつ一日を過ごす。それと、こちらから確認したのだが、仏壇に線香をあげるのも控えてほしいと言われた。肺炎のリスクがあるウイルスのため、できる限り肺を大事にしてほしいとの判断だった。
症状の悪化はなく、7月7日の午後、保健所から同日限りで療養を終えていいと許可が出た。嗅覚だけは改善しつつはあるもののまだまだ鈍い。完治には時間がかかるのかもしれない。
7月8日。部屋のあちこちをアルコールで消毒してから、久しぶりに外に出た。ちなみに、自宅療養者は自治体ごとにごみの出し方に指針があり、筆者の住む自治体では空き缶や瓶は洗った上で一週間してから出すことになっているので、今も家にたまっている状態だ。
感染を経験した者の反省としては、いざという時、どの医療機関に相談するか決めていなかったこと。入院しない場合、療養先にホテルと自宅のどちらを希望するかも考えたことすらなかった。体調不良時の食べ物など、備えもしていなかった。なにより、症状がこんなに急に現れるとは想像もしておらず、準備に結びつけるそもそもの危機感が足りなかったと思う。
感染はまた拡大しており、東京五輪の開催によってさらなる影響が出る可能性も危惧されている。筆者もまた感染しないという保証はない。まさかの時の準備を、今度はしておこうと思う。(文=AERAdot.編集部・國府田英之)