相手球団もあらゆる手で抑え込もうとする。6月29日のヤンキース戦で大谷が2打席連続アーチを放つと、七回に対戦した相手左腕ネストル・コルテス(26)はタイミングを外そうと軸足を揺らし、スローモーションのように足を上げる変則投法を試みた。球審に止められ、今度はサイドスローで投げ込んで中飛に。大谷は苦笑いを浮かべた。

■軸足の左ひざが崩れず

 大谷は6月、月間で打率3割9厘、13本塁打、23打点、4盗塁の活躍を見せ、月間最優秀選手(MVP)を受賞。前出の日本人通信員はこう分析する。

「春先に比べて相手の警戒も強くなり、1打席に打てる球は1球あるかないか。それを確実に仕留めている。今年は打撃フォームに昨年と大きな違いが見られます。昨年は球を見逃したときに軸足の左ひざが崩れていましたが、今年は動かない。きっちり下半身で踏ん張れている証拠です。下がどっしりしているから頭の位置がぶれず、緩急に崩されずにきっちり対応できている。今の打撃を続けていれば、シーズン50本塁打は現実的な数字だと思います。相手からすれば投げる球がないでしょう」

 7月4日のオリオールズ戦では「2番・DH」で先発出場し、三回に中堅へ特大アーチ。日本人選手として2004年の松井秀喜(当時ヤンキース)と並ぶ最多タイの31号に前半戦で到達した。ミシガン州の放送局「FOX17」でリポーターを務めるアーロン・バーセギアン氏はツイッターで、「オオタニは(筋肉増強作用のある)ステロイドなしで62本以上のホームランを打つ最初の人になるだろう。これはアメージングだ」。7日のレッドソックス戦でも「2番・DH」で先発出場すると、五回に32号のソロ本塁打を放ち、松井の記録を更新した。

 特筆すべきはその長打力だ。5日のレッドソックス戦で五回に左前安打を放ったことが注目された。実は直前の試合まで、安打はすべて本塁打で7打席続いていた。セーフティーバントを除くと、外野への単打は6月14日のアスレチックス戦の中前安打以来、77打席ぶりだった。この間の18試合で驚異の14本塁打を放っている。

「2ストライクと追い込まれていても、大谷は当てにいかずに強いスイングをするから本塁打を量産できる。塁打を打数で割った長打率7割はアメリカン・リーグのトップです。出塁率と長打率を足し合わせたOPSも1.064とベスト3に入っています。昨年は二ゴロや一ゴロなど引っかけた打球が目立ったのですが、今年はフライが多い。球をバットに『乗せる』感覚をつかんだ感じがします」(米国駐在の一般紙記者)

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