落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「お酒」。
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コロナ禍でお酒を手銭で買うようになった。カチンとくる方が多いかもしれんので、まず謝ります。ごめんなさい。
落語家ってめちゃくちゃお酒を頂くのです。地方の落語会の後には「これ名物の地酒です」と手土産。盆暮れには私のような若造にも「いつもありがとう」とお酒が送られてきます。酒好きを公言してるとなおさら。差し入れや贈り物はお酒。だから世の中が平和なときは自腹で買わなくてもいい。それが落語家。
去年の今頃、そんな酒の溢れかえる我が家からとうとう酒瓶がなくなりました。仕事のキャンセルでお酒を頂くこともなく、ステイホーム中に宅飲みばかりしてたので需要と供給のバランスが釣り合ったかと思った途端に、需要だけがグーンと伸びまくり近くのスーパーにお酒を買いに行くハメに。コロナに負けた、って思いましたな。
話はそれますが、落語家には痛風持ちが多いです。急に寄席を休演する落語家は70%の確率で痛風の発作。そんな人に限って「尿酸値下げる薬飲めばいいんだけど、毎日飲むのがめんどくさくて~」だって。バカか?と言いたい! 大先輩であろうとも、そんな軟弱さんは酒などやめてしまえ! 毎朝1錠飲むだけで、痛風の発作の心配なく美味しくお酒が頂ける。楽しい晩酌がたった1粒の錠剤で保証されるんです。お酒好きなら飲むでしょ!? 薬が無くなったら病院で血液検査して「まぁ、薬のおかげで数値は低いけどお酒はほどほどに」と『消極的呑んでよし!』の太鼓判を先生からもらい、また60日分の薬で安全安心な呑兵衛ライフが送れるんです。それなのに発作を気にしながら呑んで、揚げ句の果てに正月から両足の激痛に耐えながら松葉杖で寄席に通うなんて……は○治師匠! 酒呑みたかったら薬も飲んでくださいっ!!
またまた話は変わりますが、耳掃除のしすぎで左耳が外耳道炎というものになりました。そもそも耳垢は自然に外に出るらしい。医者に「お酒はダメ」と念を押され1週間我慢しました。家内に「あんなに呑んでたのによく辛抱できたわね」と言われましたが、左耳に水が入っている(ような)状態で呑んでもうまくありません。体調は万全で呑みたいのです。私は毎日美味しく呑むためなら、我慢も服薬もします(キッパリ)。