4月のある晴れた日の午前10時。東京都渋谷区の住宅街にある小さな公園に数人のシニアが集まっていた。それぞれ1~2メートルほど距離をとって、円になっている。真ん中にはCDラジカセ。一人がスイッチを入れると、ラジオ体操の曲が流れ始めた。
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青空の下、参加者は気持ちよさそうに手足を動かす。ラジオ体操第一の次は、第二。20分ほど体を動かしていると、じんわりと汗が出てくる。
「ここに来るだけで、気持ちが明るくなるんです」
と、タオルで汗を拭きながら、満面の笑みを見せる参加者の女性。聞くと、ラジオ体操は雨の日以外は毎日欠かさず開催されているという。
体操がひととおり終わったら解散……と思いきや、参加者が向かった先は、100メートルほど先にある15坪ほどの「ひだまりガーデン」。バラを中心にボタンやパンジーなど、四季を通じて100種類もの花が植えられている。真ん中には小径やベンチがあり、一息つけるスペースにもなっている。今はバラやボタンの季節。大ぶりの花が咲き誇り、よい香りを放っている。
参加者は枯れた花を摘むなど簡単な手入れをし、マスク越しのおしゃべりをはずませる。話題の中心は花壇に咲いている花。
「クレマチスも咲いたし、オルレアも咲いたね」
「あら、つぼみは赤いのに、咲いたらピンク色になるのね」
「可愛い葉っぱ、ブーゲンビリアみたい」
かれこれ30分ほどいただろうか。昼前になったので、それぞれ帰途につく。涼しくなる夕方にもう一度集まって、水やりなどをする予定だ。
ラジオ体操やひだまりガーデンを通じたシニアの居場所づくりに取り組むのは、この地域で暮らす中島珠子さん(68)。約20年間、看護師として医療機関で働き、一昨年に定年を迎えた。現在は若年性認知症の支援や、高齢者福祉のボランティア活動などを行っている。
ひだまりガーデンができたのは、今から5年ほど前だ。
「空き家を撤去して更地になっていたところで、手入れもされていなかった。草ぼうぼうになっていたんです。その空き地の活用法としてバラ園はどうかと、町内会の会長に相談しました。最終的に区から許可が出て、土地を借りることができました」(中島さん)