「少人数で散策したり、公民館のような広めの室内で脳トレや手芸を楽しんだりしています。参加者は、『コロナも怖いけれど、足腰が弱くなって寝たきりになるのも、認知症になるのも怖い』と言っています」
感染状況や地域によっても違うが、人とソーシャルディスタンスをとって体を動かすラジオ体操や、室内であってもマスク着用と十分な換気のもとでなるべく会話をしなくてすむような活動であれば、やっていけるのではないかと、藺牟田さんは考える。
反対に、なかなかその一歩が踏み出せないケースはどうか。
「最も影響するのは、活動の内容でしょう。例えば、私が関わっているボランティア組織には、独り暮らしの高齢者のお宅を訪問して、読み聞かせをする活動があります。3月の緊急事態宣言が明けたときに再開をする予定でしたが、結局、まだ再開に至っていません」
このほかにも、大勢が集まるものも、統制がとりにくいので再開が難しいのではないかという。
シニアの活動について調査研究を行う博報堂「新しい大人文化研究所」の所長、安並まりやさんは、シニアに「感染が怖い」とは別の危機感が生まれているという。
「それは“自分にはあと何年残されているかわからない”ということ。ワクチン接種も進んだことで、“元気なうちにやりたいことをする”という思いが強くなっているように思います」(安並さん)
この変化は、災害や感染症など非常事態で人とつながるためにも必要だという。安並さんによると、定年も過ぎ、組織に縛られないアクティブシニアは、これまでは「好き」をベースにつながることが多かった。ところが、今後は共助や互助のつながりを強める方向へとシフトしていくのではないかと予測する。
「誰かを見守るというより、お互いに役割を持って支え合うという関係性、“半径500メートルのつながり”が強まると思われます」(同)
地域での活動に加わらなくても、「自分の暮らす街」を楽しんでいるアクティブシニアもいる。