「毎日が冒険」とコロナ禍でも一日も欠かさず散歩を続けているのが、港区で独り暮らしをする門田真乍子さん(86)だ。亡き母と始めた散歩は、かれこれ46年になる。
「風が強い日も雨の日も歩きます。コロナは怖いけれど、ワクチンを打ちましたしね。私は家にこもってボケるほうがたいへん困ります」(門田さん)
日々の散歩を楽しむために決めているのが、「毎日、歩くルートを変えること」。一本でも昨日と違った道を選ぶ。これが門田さんのいう“冒険”だ。不思議なことに住み慣れた街でも道を一筋変えるだけで、毎回、新しい発見がある。ラジオ体操のように、同じ時間に同じ場所で同じことをするよりも、「ちょっとずつ新しいことをするほうが、自分に合っている」という。
門田さんが住む地域は緑が多い。緑道やよく手入れされた庭先の植木や花、プランターに植えられた野菜を眺めながら散歩するだけでも、楽しい。最近発見したのは、あじさい。先日も、きれいな白いあじさいが咲いていた道を見つけたばかりで、心が躍る。記者に写真を見せて、「このモチッとした感じとか。がくあじさいも白と紫の逆バージョンとかあって、きれいでしょう」と話す。
もともとは旅行が趣味で、20年ほど前に夫を見送るまでは夫婦で、一人になってからは単独で旅行に出かけていた。
「旅行に行けないのは残念ですが、私には散歩がありますから。散歩をすると知的な感動をもらえます。夏に雨が降らない日が続くと街が乾いて白っぽくなるんですが、そんな日に夕立が来ると思わず『嬉しい!』って、散歩で出会う植物たちのために喜んだりしています」(同)
東京都は4度目の緊急事態宣言が出て、まん延防止等重点措置がとられている地域もまだある。沖縄県は宣言の状態が続く。しかし、高齢者の閉じこもりによる健康状態の悪化も切実だ。日本臨床整形外科学会の調査によると、コロナ禍で「つまずきやすくなった」「速く歩けなくなった」というシニアは2~5割もいた。体もそうだが、心の健康も心配だ。