金メダルを目指す野球日本代表の稲葉篤紀監督 (c)朝日新聞社
金メダルを目指す野球日本代表の稲葉篤紀監督 (c)朝日新聞社
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 3大会ぶりの競技復活となる野球は、オールプロでチームを構成した。2008年北京大会に出場した野球評論家の里崎智也氏は「金メダルは取って当たり前」と話す。

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「今回のトーナメント方式は変則で、敗者復活も含めると4勝3敗でも金メダルの可能性があります。ジャイアント・キリング(番狂わせ)が起きにくく、メジャーリーガーは出場しない。オールプロで挑む日本に有利になるでしょう」

 キーマンとなる選手は誰か。

「国際試合では、核となる4番打者が打たないと勝てない。その意味で、打者は鈴木誠也がカギでしょう。守りでは、捕手の甲斐拓也。他チームの選手情報が少ない中、試合当日に打者の様子を見て、瞬時に攻め方を決めることが重要です」

 日本が優勝候補の筆頭といっても、国際試合には独特の重圧がある。北京大会では西武ライオンズ(当時)の主砲だったG・G・佐藤氏が準決勝の韓国戦で、3失点に絡む2失策をして負けた。3位決定戦でもレフトフライを落球し、最終的には4位に沈んだ。佐藤氏は、こう振り返る。

「準決勝になって『負けてはいけない』となったときに、はじめて緊張しました。エラーをした後は、『交代してほしい』と本気で思いましたが、こんなことを思ったのは野球人生でなかった」

 帰国の飛行機では「死にたい」と書いたメールを妻に送った。ただ、3度のエラーも今ではプラスになったという。

「失敗したことで人の痛みがとてもわかるようになった。星野監督は2度もエラーをしたのに、翌日の試合でも起用してくれました。そのことは今でも感謝しています」

 北京の悲劇から13年。つらい経験をした佐藤氏に、日本代表への助言をもらった。

「主会場の横浜スタジアムはホームランが出やすいので、日本はスピードとパワーを兼ね備えた『コンテンポラリー(現代的な)ベースボール』を目指すべきです。五輪は負けても必ず人生にプラスになるので、失敗を恐れないこと。でも、ひどいエラーをしないでほしいですね。僕の仕事がなくなるので(笑)」

(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2021年8月6日号