素朴な星占いもヒルマン的に言えば大切なたましいの働きと関連しています。星占いで、○○座生まれの人の今年の運勢と言っても、みなさん、それを文字通り信じることはあまりないでしょう。でも、ベタには信じないけれどもどこか気になる。気になるのは、自分の一部を星に託している感覚があるからではないでしょうか。それはとてもわかりやすい魂の感覚、ダイモーンの感覚だと思います。

 じつはヒルマンの主張のバックボーン、考え方の素地は占星術と同じです。古代の神話では「人間は、魂がくじ引きで選んだ運命とダイモーンをもって生まれてくる」とされていました。そして、そのダイモーンは星と同一視されていた。つまり、その人だけの星があるという占星術の思想は古代の新プラトン主義の哲学に依拠しているわけです。

 ヒルマンの依拠している思想も、じつは新プラトン主義です。要は『魂のコード』のバックボーンは占星術と同じなんですね。僕が翻訳者に抜擢されたのには、そんな理由もあったのかもしれません。ちなみにヒルマンの息子さんは占星術師になっていて、僕は20年以上前、親子共演のトークイベントを見るためだけに、西海岸まで駆けつけたことがあります。

『魂のコード』にしろ占星術の本にしろ、単に文字通り読んだら「なんてバカみたいなことを」で終わってしまいかねません。逆にベタに信じてしまっても困りものです。実際、本書をニューエイジ的スピリチュアル本と勘違いする人もいて、苦笑することも多いのですが…

 なので、あなたが生きていくうえで大事な「何か」を表現している豊かなメタファーとして読んでほしいと思います。

『魂のコード』にはソウル・メイキング、魂をつくるという表現も出てきます。これは19世紀のイギリスのロマン主義の詩人ジョン・キーツから来ている言葉ですが、彼はネガティブ・ケイパビリティという言葉も使っています。端的に言うと「わからないものはわからないままにしておこうよ」という構えです。これが大事だと思います。

 とかくエビデンスとか効率とか平均値とか、そんなことばかりをみんなが気にするようになって、占いの世界でさえ、損得勘定の自己啓発セミナー化しています。それではあまりに寂しすぎます。たまにはまったく違う『魂のコード』のような視点から世界を見て、人生や人間の豊かさを感じてほしいと思いますね。

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