7月12日に都で4度目の緊急事態宣言が始まり、再び営業時間は午後8時までの短縮となった。店はコロナ禍以降、累計赤字は200万円近くになった。時短協力金はいつ支給されるかわからない。今回は、30万円以下の過料を払ってでも営業を続けざるを得ないと判断した。
「飲食店ばかり我慢しろといって、なぜ五輪はやるんですかね」
■福島を利用している
五輪を実施する意義は何か。
当初、国が掲げた東京五輪の理念は「復興五輪」だった。
「『復興五輪』なんて言ってほしくないです」
福島県南相馬市に暮らす佐藤智子さん(66)は、憤る。
自宅は福島第一原発から約26キロの場所にある。事故後、放射能を避け栃木県内に避難していたが、2年前に地元の施設で暮らす母親(90)の介護のことなどもあり家族で戻った。夫と息子、孫の4人で暮らす。
奪われた生活は戻らず、生活は厳しい。今も自宅に隣接する側溝などには、放射線量が高い場所がある。とても「復興」したとは思えない。
3月25日、聖火ランナーがJヴィレッジ(楢葉町、広野町)をスタートした。しかしそれは、原発事故を強制的に「終わりにする」という意味に取れた。市内をランナーが走ったが、見に行きたいとも思わなかった。
「福島を利用しようとしているんだよね」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年8月9日号より抜粋