そんなある日、この縁壱に、神がかり的な剣術の才があることがわかる。兄・巌勝は大きなショックを受け、弟への嫉妬心にとらわれる。継国家の後継者を縁壱に、という声が周囲からあがった。巌勝も縁壱もまだ7歳だった。
さらに不幸は続き、この後継者騒動の最中に母が病死してしまう。母の死をきっかけに、縁壱は継国家を出ていくことを決意した。「忌み子」である自分が、兄を不幸にしてはならないと思ったからだ。
■継国縁壱の願った「幸福」
<この世は ありとあらゆるものが美しい この世界に 生まれ落ちることができただけで幸福だと思う>(継国縁壱/21巻・第186話「古の記憶」)
「忌み子」として過酷な現実を背負わされてもなお、縁壱はこの世界を愛した。その一方で、彼自身に平穏な幸福は訪れなかった。愛した女性は、自分の留守中に、腹の中にいた赤ん坊もろとも、鬼に喰い殺されてしまった。運命が縁壱から大切な人を奪っていく。
<私の夢は 家族と静かに暮らすことだった 小さな家がいい 布団を並べて眠りたい 愛する人の顔が見える距離 手を伸ばせばすぐに繋げる 届く距離 それだけで良かったのに そんなことすら 叶わない>(継国縁壱/21巻・第186話「古の記憶」)
■最愛の兄との再会
妻子の死後、鬼狩りになった縁壱は、再会した兄・巌勝とともに、鬼殺隊剣士として過ごす。縁壱にとっては、再び家族と寄り添えることのできた幸せな時間。しかし、そんな時も長くは続かず、兄は、縁壱のもとを離れ、鬼になってしまった。
最強の剣士だというのに、兄が鬼になるのを止められず、せっかく見つけた無惨も取り逃がしてしまった。自分が教えた「呼吸」の影響で、強者の印である痣(あざ)を発現した仲間たちは、次々と死んでいく。
<私は恐らく鬼舞辻無惨を倒す為に 特別強く造られて生まれて来たのだと思う しかし私はしくじった 結局しくじってしまったのだ 私がしくじったせいで これからもまた 多くの人の命が奪われる 心苦しい>(継国縁壱/21巻・第187話「無垢なる人」)