本誌ではインターネットを通して、周囲との五輪への温度差を感じた瞬間についてアンケートした。すると、
「五輪に興味がないというと、変わった人だと思われたいだけだと言われたことがある」(31歳・男性)、「五輪はみんなが楽しみにしているものだという空気が職場にあり、ついていけなかった」(40代・女性)、「周りがチケットを買えたことをよろこんでいるときに温度差を感じた」(51歳・女性)
などの回答も寄せられた。
都内に住む別の50代女性は、子どもが学校から持ち帰ったうちわに、五輪招致の桜のエンブレムが印字されているのを見つけたときに、周囲との温度差を突きつけられたという。
女性は、五輪競泳金メダリストの北島康介さんが通っていたスイミングスクールに息子を通わせているというが、
「にわかのバカ騒ぎが好きじゃないんです」
と説明する。五輪に限らず大規模な試合が開催されるたびに、スポーツバーなどの盛り上がりが話題になる。18年のサッカー、19年のラグビーのワールドカップ(W杯)でも、東京・渋谷周辺の酒場やスクランブル交差点は大勢の人たちでごった返した。来たる東京五輪を思うと、憂鬱(ゆううつ)さは増した。
ところが、女性の心配は裏切られる。新型コロナウイルスの感染拡大で、五輪は1年延期に。さらに無観客開催という史上初の出来事が続いた。
すると、今度はバカ騒ぎより、コロナの感染拡大への不安が募った。(編集部・福井しほ)
※AERA 2021年8月9日号より抜粋