「それでも私は私の人生を、誰にも邪魔されずに生きていきたかった。だって休日に出かけようとすると、『何時に帰ってくる?』『オレの昼飯は? 夕飯は?』と聞いてくるんですよ。大人なら『自分の食事くらい自分でなんとかしなさいよ』と言いたいところだけど、そこが先輩・後輩の悪い習慣で、つい昼食を用意し、夕飯までには帰ってきてしまう。私は夫にとって飯炊き女でしかないのかとため息ばかりついていました。娘たちから『いいかげんにお父さんを甘やかすのはやめたほうがいい』と言われていたけど、『女はこうあるべき』に私もとらわれていたんでしょうね」
なかなか離婚を承諾しなかった夫だったが、決意を固めたハルコさんに揺らぎはなかった。春に離婚を宣告。最後には夫が折れ、家を母娘に明け渡して出ていった。現在は会社の社員寮に住んでいるようだ。ただ、離婚後は結婚時よりも交流があるという。
「不思議なもので、夫と妻という立場でなくなったら私も気が楽になり、言いたいことが言えるようになったんです。元夫とは時々、外でランチをしたりするし、娘たちも会っているみたい。私は娘たちと暮らしていますが、女3人、それぞれ勝手に生活しているという感じです。夫と離婚すると同時に、娘たちとも親子というより、ひとりの人間同士として接するようになっています」
母娘にありがちな妙な葛藤もなくなった。ハルコさんは妻とともに“母”という重い役割も手放せたのかもしれない。母娘の関係に新たな風が吹き込んできたのだろう。
■仲よし夫婦でも「独身」への憧れ
相手に不満がなくても離婚を選択するケースもある。
「うちは本当に仲のいい夫婦だったんです。子どもたちにからかわれるくらい」
結婚25年にして離婚したのは、ユウコさん(仮名、53歳)だ。夫は学生時代からつきあっていた同い年で、就職3年目で結婚したという。27歳で長女を、29歳で長男を出産。共働きで協力しながら家事も子育てもがんばってきた。