──右京のキャラに惹かれる男性が多いのも、ヒットの要因かと。
水谷:相棒が始まったばかりのころ、家に来た宅配便のドライバーが僕に気がつきまして。「『相棒』おもしろいですねー。でも妻が言うんです。『水谷さんはあんな冷たい人じゃなかった。だから相棒は見たくない』って」と。まあ、右京のタイプで、誰にでも好かれようとは思いませんが、そこまで嫌われてしまったかと。その一方で、右京はうまくやったな、とも思いましたよ。そこがまた魅力の一つでもあるのですから。右京は正しいことを言ってる。ただ、時や場所を、構わず言ってしまうだけで……。
寺脇:ええ、その辺が、社交性ゼロですから。
水谷:ね? 亀山くんにそう言われちゃうくらいですから(笑)。
寺脇:一方、亀山は亀山で、社交性はありすぎるくらいあるんで。だから、どっちも足りないものがあって、それがじわじわと混ざり合っていくという、その過程がおもしろいことはたしかです。
──亀山の卒業後の「相棒」を寺脇さんはどうご覧になっていましたか?
寺脇:それぞれぜんぜん人間性が違う存在でいいなと思って見てました。実は僕は、卒業したときに、もう亀山として戻ってくることはないと何となく思っていましたから、あたたかい目でね(笑)。ほかの相棒頑張れ!と思って、強い仲間意識を持ちながら。
水谷:とにかく4人に共通するのは、名前が「か」で始まって、「る」で終わるというだけで、中身はぜんぜん違いますからね。ただ、世の中のすべてのものには終わりがあるように、「相棒」にも終わりがいつかくる。その前にいつかは亀山薫再登場っていうのはイメージがあったんですよ。で、そろそろ亀山くんに来てもらいましょうと。いや、亀山くん、よく来てくださいました。
寺脇:こちらこそよく呼んでくださいました。
──寺脇さんが「相棒」を離れてから14年。変わったことは?
水谷:撮影が始まってからも、まだ口には出していないですけど、何度も亀山くんに言いたくなった言葉があって。「君、相変わらずですね」とね。例えば事件の捜査で、聞き込みに行ったりする。と、つい調子に乗るところがあるんですよ。相手を気分よくさせるためでも、そこまでサービスしますか?みたいな。そういうところって、本当に相変わらずですね。実はこの「君、相変わらずですね」が、楽しいところだったり、ホッとするところでもあるんですけどね。
寺脇:本当に薫は変わらないっすね(笑)。ま、右京さんも、ですけど。実際、薫のセリフではもうありましたよ。こっちがこんなに焦ってるのに、右京さんが冷静、という場面で「相変わらずだな……ったく!」と。
(取材・構成/福光恵)
※週刊朝日 2022年10月28日号より抜粋