(3)音楽 音楽は弦楽器のプサルテリーを時間を見つけて15分ほど弾く。月に1回は指導を受けている音楽家の折山もと子さんが開く楽器練習会に必ず参加、デイケア仲間と楽しむ。ウクレレも最初に比べると格段に上達している。プサルテリーをやり始めたころ、TBSラジオの番組、永六輔さんの「六輔七転八倒九十分」に生出演した。2016年1月のことだ。MCIと診断されてからどんなトレーニングをしたか、問われるまましゃべった。そのときにどんな音がするのかと聞かれ「上を向いて歩こう」(中村八大作曲、永六輔作詞)のさわりを弾いた。すると、

「選曲がいいね」

 と車椅子の永さんはにっこり。生番組で間違えたらどうしようと思ったが、平静でいられた。30年以上のお付き合いがあった永六輔さんが亡くなる半年前だった。

 音楽は「継続」に欠かせないアイテムだと最近特に感じている。スポーツクラブでは音楽に合わせて身体を動かすズンバを始めた。最初は動きが音楽に遅れて「横や正面の鏡を見るとタコ踊りにしか見えない」と自分で思ったし、周りの女性に笑われている気がしてヒケた。でも、トレーナーから「自分流に身体を動かせばいいのです」と言われて構わずに続けるうちおもしろくなった。

 折山さんから習った「わからないときはごまかす技術」はだいぶ向上した。音楽に合わせて身体を動かすとドーパミンという神経伝達物質が出て気分を良くすると言われている。運動や美術も音楽を聴きながらやると楽しい気分になるのはそのせいだ。

 スポーツクラブではパラリンピックの正式種目であるボッチャも始めた。白のボールの近くに2チームが赤と青のボールを近づける競技。氷上のカーリングに似た部分もある。力を加減してボールを投げるのがコツだ。仲間同士で作戦を練る必要もある。本山さんにそのことを話すと、

「ボッチャは私も認知症リスクを減らすには有効なゲームだと思っています。認知症の症状が進むと力加減ができないケースが多い。力加減をしてボールを思った所に投げるには感覚神経が大切です。それがゲームで養われる。仲間との会話も生まれるし、どんどんやったほうがいいですよ」

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