新型コロナ禍で青息吐息の飲食店を尻目に、街中でよく見かけるのが弁当などを移動販売するキッチンカー(フードトラック)だ。軽トラックやライトバンに厨房(ちゅうぼう)設備を取り付けた車両は、今やオフィス街やイベント会場だけでなく、住宅街にも進出している。その現状をリポートする。
【写真】「ラッキーポークカー」で人気のチャーシューエッグ丼はこちら
* * *
国内屈指のオフィス街、東京・大手町。新型コロナ禍によるリモートワークでビジネスマンの姿は減ったものの、ランチ時ともなると各ビルのエントランスやパティオに並ぶキッチンカーには人だかりができる。
中でも神田川沿いの「大手町川端フードガーデン」は、毎日10台前後が軒を連ねるキッチンカーの“名所”だ。
7月のある日、正午前に訪れると、ケバブやタコライス、チキンビリヤニ、奥では吉野家のノボリもはためいていた。
運営管理するのは「無形工房kochen」(東京都港区)。同社の中野敏行社長(60)はキッチンカー歴15年の業界最古参の一人で、6年前から委託されている。
「コロナ前は、15台前後出店して月間総売り上げ約900万円を記録したこともありました。それが最初の緊急事態宣言で営業ができなくなり、いったんゼロに。再開後は昨年8月が約230万円、現在は10台で約500万円まで戻しています」
キッチンカーもコロナに翻弄されてはいるが、参入者は増えている。
空きスペースのマッチング事業のパイオニア「軒先」(東京都千代田区)の西浦明子社長(52)は「コロナ前に比べて弊社に登録された出店者(社)は1.4倍に増えました」。
キッチンカー専門メーカー「フードトラックカンパニー」(東京都目黒区)の浅葉郁男社長(37)も、「受注したキッチンカーは、2019年が月間平均10台ほどでしたが、昨年は20台へと倍増し、今年は上半期の実績で25台です」と話し、キッチンカー需要は強いという。
グルメに知られた都内・丸の内の「東京会館」が昨年12月、「日比谷松本楼」が今年1月からキッチンカー事業に着手したことも話題となった。