その会社は13年6月に創業した「NE PROJECT」(大阪府堺市)で、和田幸一社長(52)は大手クーポンサービス会社の役員を経て開業支援を始めた。

「クレープは食べたことはなくても、どのようなスイーツか誰もが知っていますし、ポップで可愛いイメージなので場所が借りやすい。企業イベントの出店依頼も多く、しかも比較的利益率が高いのが魅力です。売り上げは現状で月平均70万円くらいから、多い人で200万円」(和田社長)

 同社の強みは和田社長自らが開拓したショッピングモールやアウトレットモール、ホームセンター、スーパーなど、全国に数百カ所持つ独自の出店先だ。

 一方、小林さんにとっては大きな人生の岐路。少なからず葛藤があった。

「最初、妻に相談したときは、猛反対されました。でも定年までのカウントダウンが見えてきて、その後の生活に不安を感じていたので、『気力も体力もあるうちに起業して基盤をつくっておいたほうが得策』と説得して了解を得ました」

 出店した矢先にコロナ禍となり、当初の目算とは違う結果になったが、

「お客さんの笑顔を毎日見ることができるのは、本当にやりがいを感じます。夏場は苦戦しますが、リピーターさんが徐々に増えてきてるので頑張れますね」

 キッチンカーの開業に当たっては、多くの仲介業者などがそれぞれセミナーを開いているので、まずは受講することをお勧めしたい。

 とはいえ、皆が皆、成功するほど楽ではない。無形工房の中野社長がこう指摘する。

「だれでも参入できるのがキッチンカーですが、3年後に生き残っているのは3割ほど。調理に火を使いますから、料理によっては車内温度が70度を超すことはザラです。それでも成功している人は、助言者の話を素直に聞き、模倣が上手な人」

 車両購入の際は、少なくとも数社から相見積もりを取ったほうがいい。

「保健所の許可がとりやすい設計で、オペレーションがスムーズにできる。そしてコンディションの良い車両を選ぶことが大切」(前出の浅葉社長)

「予算が少なければ中古車。150万円ほどからあります」(中野社長)

 流行に踊らされず、信念を貫くことが成功への早道だ。(高鍬真之)

週刊朝日  2021年8月20‐27日号

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