人気の理由は、密を避けての飲食で、弁当・総菜を購入したい消費者ニーズにほかならない。また、経営側にとっては、初期費用、維持・運営費を安く抑えられるため出店しやすい。もし、思うような売り上げが確保できない場所であれば、即座に移動して新たなマーケットを探せる……。

 主な出店場所はオフィス街や幹線道路のロードサイド店駐車場だが、新たに住宅地やタワーマンション、大型総合病院が注目されている。軒先の西浦社長がこう話す。

「コロナ前は見向きもされなかった住宅地に、いざ出店してみたら、意外とランチや総菜の需要がありました。大人数での外食がしにくい中、非日常的なキッチンカーでの買い物は、心をウキウキさせるプチレジャー感があるからではないでしょうか」

 今年4月から埼玉県内で、チャーシュー丼などを販売する「ラッキーポークカー」を出店している河野英司さん(52)は昨年6月、28年間経営してきた都内千代田区の居酒屋を閉め、新たな活路にキッチンカーを選んだ。

「老若男女問わず、好き嫌いが割と少なく、安価に提供できることから豚肉料理をメインにしました。曜日ごとにJR蕨駅、北与野駅の駅前と越谷市の獨協医科大学埼玉医療センターにいます」

 愛車の製作は先述のフードトラックカンパニーに依頼し、厨房設備を含めて初期費用は約350万円。すべて預貯金で賄った。

「出店場所は仲介業者にあっせんしてもらっています。自分で探したこともあるのですが、条件の良い場所はすでに仲介業者が押さえているので、『は餅屋』に任せることにしたわけです」

 出店時間は12時から20時前後。売れ行きがいいのは16時以降の総菜タイムで、1日当たり3万~5万円の売り上げという。

 クレープとタピオカをメインにフランチャイズ(FC)制の「ベリーズ・カフェ」で奮闘中なのは、同じく埼玉県の小林勲さん(54)だ。

「2年前、それまで25年間勤務していた冠婚葬祭会社を早期退職して、昨年1月に開業しました。下調べの結果、過去の実績と1年を通じて売り上げが見込める商品としてクレープを選び、研修や車両、食材をセットで起業支援する大阪の会社と契約しました」

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