西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、東京五輪の野球日本代表について語る。
【写真】東京五輪の米国戦でサヨナラ打を放ち、祝福される甲斐拓也選手
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東京五輪も、このコラムを書いている時点で日程の半分以上が消化された。競泳が終わって、陸上競技が始まると、五輪も終盤戦になったなと感じる。
コロナ禍の五輪。増え続ける国内の感染者数を見ると、五輪がなければ……と思う方もいるでしょう。その思いは自由であるし、誰も否定はできない。でも、出場選手の大半は身を律し、決められたルールの中で行動している。SNSなどで誹謗(ひぼう)、中傷といったたぐいの書き込みがあって、選手が声を上げているのを報道などで見受けるけど、選手に罪はないよ。そういった方々は、怒りをぶつける手段がないのかな。精いっぱい戦う選手を温かく見守ってほしい。
五輪を自宅で見ていて、日本選手として道を切り開いた選手には私も勇気をもらっている。例えば、卓球の混合ダブルスで、強い中国ペアを逆転で下して金メダルを獲得した水谷隼、伊藤美誠ペア。陸上の、アフリカ勢が席巻している男子3000メートル障害で入賞した三浦龍司もそう。日本だから、アジアだから……そういう言い訳をせずに、世界で勝ちたいと純粋に思う心は、見ていてすがすがしく感じる。
ゴルフの松山英樹も惜しかったな。紙一重の差で勝者と敗者が決まるのがスポーツ。そしてどんな選手だって、そこまでの努力は消えないし、長い人生で必ず役に立つ。
野球の話をしよう。侍ジャパンは準決勝にまで駒を進めている。2日の準々決勝の米国戦は、九回に同点に追いつき、十回のタイブレークの末にサヨナラ勝ちしたが、これも危なかった。
開幕戦で打たれた青柳晃洋(阪神)をまた同点の場面で使った。起用すること自体に問題はない。ただ、その場面だ。初戦で指摘したのと同じく、左打者が先頭打者だった。日本でいくら左打者のほうを抑えているといっても、あくまで日本プロ野球の話である。この試合で青柳は3ランを浴びた。