AERA 2022年12月5日号より
AERA 2022年12月5日号より

 BA.5はそれ以前に流行していたオミクロンに比べて、中和抗体による攻撃を回避する能力が高いことがわかっている。このため、ワクチンを打っても感染するブレークスルー感染が起きたり、1度すでに感染しているのに再感染したりする人が増えた。

■中和抗体を回避する

 感染研によると、新たな亜系統のうちBQ.1系統やXBBは、BA.5よりもさらに中和抗体からの逃避能力が高い可能性があるという。このため、BA.5よりもブレークスルー感染や、再感染がさらに増える恐れがある。

 米ハーバード大学医学部ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターなどの研究チームは、ワクチンを接種した人の血液を使った実験で、新たな亜系統の性質を調べた。専門家による評価を受ける前の論文によると、B.1.1は、BA.5よりも約7倍、中和抗体を回避する能力があった。

 また、北京大学などの研究チームも、ワクチン接種を受けた人らの血液を使った実験を行った。専門家による評価を受ける前の論文によると、XBBはBQ.1.1よりもさらに中和抗体を回避する能力が高かった。

 ワクチンはこれまでのところ、BA.5のように中和抗体を回避する能力の高いウイルス系統に対し、感染を防ぐ効果は大きく低下するものの、重症化を防ぐ効果はある程度、維持されているとされている。また、ワクチンにより、後遺症も軽減されるとされている。

■後遺症リスクも高まる

 理論的には、感染によって獲得した免疫にも、重症化を防ぐ効果があると考えられるが、実際は異なることが米国の退役軍人ヘルスケア・システムの臨床疫学センターなどの研究チームが医学誌「ネイチャー・メディシン」に発表した論文でわかった。再感染すると、初感染の際に比べて重症化するリスクが高くなり、しかも後遺症のリスクも高まる恐れがあるという。

 研究チームは米退役軍人省の退役軍人の健康データベースを使い、新型コロナウイルスに1回だけ感染した44万3588人と、再感染した4万947人を比較した。再感染した人のうち2回感染した人が92.8%、3回感染が6.3%、4回以上が0.9%だった。

 感染から半年間の死亡リスクは、再感染した人は1回だけの感染の人の2.17倍高かった。また、入院が必要になるほど重症化するリスクは3.32倍高かった。

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