でも、一番大事なのはやはり、豊かな思春期を過ごせるということだと思います。単に大学受験で難関大学に入りたいのであれば、公立高校でも実績を出している学校はありますし、極端なことを言えば、朝から晩まで予備校に通っていれば、最も目的を達成しやすいと言えるかもしれない。でも学校は、単に教科書の内容を習いにいくだけの場所ではなくて、各学校で育まれた文化をシェアしあう場であり、さまざまな文化に触れる場でもある。
■学校独自の非認知能力
特に私立の場合は、学校自体に受け継がれている文化があり、その文化を吸収できることの意味が大きいように思います。例えば、慶應義塾の場合は福沢諭吉の教育理念があります。私立学校は理念をベースに教育が行われており、先輩から後輩へと受け継がれているものがあります。そこで生まれる文化というのは、学校独自の“非認知能力”とも言えます。社会学の言葉でハビトゥスと言われるものですが、それぞれの学校でこの非認知能力がブレンドされ、育まれている。どの学校のブレンドを子どもに吸収させたいか、そういう視点で、学校選びを考えてほしいと思います。
──どの学校の理念や文化が、わが子に合うのか、どんな観点で見ればいいのでしょうか。
これはよく聞かれる質問ですが、子どもも学校も固定されたものではなく常に変化するので、答えようがありません。その上で、あえて言うなら、学校選びはパソコンや家電を買うようなショッピングとは違うということ。学校はコスパやスペックで選べないものです。
結婚に例えるとピンとくるかもしれません。“あの人はコスパが悪いからやめておこう”などとは考えないはずです。この人とならしっくりくる、落ち着くというような総合的な感覚を大事にする。学校選びでも実はそういう感覚が大事です。
■校長先生の振る舞い
──コロナ禍で学校説明会もオンラインになるなど制限があるなか、見るべきポイントは?
オンライン説明会の場合、画面以外の周辺情報が得にくいですが、実はそういうところに情報が詰まっています。でもオンラインでは学校が見せようとしている情報しか見えない。その場合は、学校がどのように見せようとしているかを観察するのがいいと思います。IT系の企業プレゼンテーションのようなのか、ぼくとつとした雰囲気なのかなど、その違いから学校の本質が見えると思います。