夏休みは子どもの進路についてゆっくり話し合う時間が取れる。中学受験をするのか、どう学校を選べばいいのか。教育ジャーナリストのおおたとしまささんに聞いた。AERA 2021年8月16日-8月23日合併号の記事を紹介。
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──中学校を選ぶ際に、まずは中学受験をするのか、悩みます。
一つのポイントとして、中学受験をして中高一貫校に行くと、高校受験をしなくてもいいということが挙げられます。14歳、15歳の思春期に、多くの子どもたちが同じような問題の試験を受けさせられて、順番を付けられ、行く学校が決まるという高校受験の制度は世界的に見て非常にまれです。教育学では、小学校段階を初等教育、大学段階を高等教育、その間の段階を中等教育と呼びます。日本の場合はこの中等教育が中学と高校で分かれている。もちろん、他国でも、中等教育が半分終わったら職人の道に進むなど、ルートが分かれていくところはありますが、日本のように、ほとんどが同じようなテストを受けて、その結果で進路が決められるのは非常に珍しい。
■思春期と受験の両立
諸外国になぜ高校受験がないかと言えば、この時期は非常に多感な時期だということがあります。反抗期の時期でもありますから、大人に対して疑問を抱いたり、社会に対しての反感が生まれたりする。こうしたことを経験しながら、自分を創っていく時期です。紙と鉛筆で勉強をするよりも、本を読んだり、旅をしたりしながら体験的に学びとっていく時期だという考えがグローバルスタンダードとしてあります。
ところが、日本で高校受験をする場合は、受験と、思春期、反抗期を両立させなければならない。中高一貫校に行くことで、自分を形成する時期である豊かな思春期を、受験に邪魔されることなく過ごせるというのは、一貫校に通わせる大きなメリットだと思います。
──中高一貫校は、長い期間で深い学びができることにメリットを感じる人も多いです。
学びのペースが高校受験で足踏みさせられることなく、どんどん先の単元を進めていけるという意味で、学力的な部分のメリットを挙げる方はいますね。高校受験がない分、目先の1点、2点を気にしなくていいということもあります。例えば、英語の場合、間違えることを恐れずに話すことにチャレンジするのに授業時間を多く割くことができたり、理科でも元素記号を暗記するだけでなく、実験に時間を割いてレポートを書く練習ができたりと、学びの土台が築けるという良さはあります。