実は古橋がチームに合流した時、セルティックはシーズン開始直後ながら「どん底」だった。昨シーズンは、9連覇していたリーグ王者のタイトルを、同じ街のライバルであるレンジャーズに奪われた。さらに「欧州チャンピオンズリーグ」の予選でデンマークのチームに敗れ、本戦への出場を逃していた。アンジェ・ポステコグルー監督が、選手補強がうまくいってないことをインタビューで漏らすなど、古橋の合流前にはチームを覆う雰囲気は決して良くなかった。それを一変させたのが古橋だった。

「昨シーズン、大きな目標だったリーグ10連覇が達成できずにライバルのレンジャーズに奪われてしまい、ファンたちは非常に怒っていました。しかし、今や状況が好転しました。古橋のおかげでファンにも笑顔が戻ってきました」(同)

 トム氏は古橋の能力を高く評価する。

「彼の動きは素早く、つかみどころがなく、ディフェンダーが彼をマークするのは非常に難しい。彼のファーストタッチは素晴らしく、ゴールも決められる。さらには、相手ディフェンダーがボールを持つと、追いかけてパスを封じたり、クリアを阻止したりととにかく働いてくれる。ファンはその誠実さを愛してるんだ」

 これらの能力はヴィッセル神戸時代にも発揮されていたが、同じプレーをすぐに海外でもやってみせるのはさすがである。

 古橋の最大の魅力は、ゴールを決められる決定力だ。神戸時代はイニエスタやサンペールなど、古橋の素早い動き出しを見て、瞬時にパスを出すハイレベルなチームメートがいた。古橋の動きに合わせてパスを出せる仲間がセルティックにいるか懸念されていたが、杞憂(きゆう)だったようだ。

 これまでの試合を見る限り、さすが欧州の強豪チームだけあって、古橋の動き出しに合わせたセンタリングや、ディフェンダーの裏を抜けるパスを出せるチームメートが複数いる。特に、パス能力の高いスコットランド代表のライアン・クリスティ、オーストラリア代表のロギッチは古橋のゴール量産の助けになりそうだ。「ターンブルやマクレガー主将のパスもうまい」(トム氏)と古橋には心強い。

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「何度も足を削られるかもしれない」