政府は8月末に国民の6割が新型コロナウイルスワクチンの1回目の接種を終えるとし、20代への接種をよびかけている。だが、若者からは、打ちたくても予約できない、後回しにしているのに悪者にしないで、との声もあがる。AERA 2021年8月30日号で取材した。
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家にこもっている間に、大学生活の“折り返し地点”を意識するようになった。
「授業はオンラインになり、友達にもほとんど会えていません。就活や卒論もあるからサークルに打ち込めるのはあと1年くらいしかないのに、きっとできないですよね」
そうため息をつくのは、都内の大学に通う女性(20)だ。大学生活はコロナ禍の最中に始まった。昨年4月の入学以来、自宅でできることを探しては、前向きでいようと意識してきた。
だが、ふとした瞬間にやるせない気持ちが押し寄せる。女性は言う。
「コロナの終わりは見えないけど、大学生活の終わりは少しずつ近づいてるなって思います」
多くの学生にとって、勉強はもちろん、部活動やサークル活動にアルバイトなど、大学生活でやろうと思い描いたことが自由にはできない日々が続いている。取材に対して、就活の定番質問の一つ、「学生時代に力を入れてきたこと」を話せそうにない、と不安をこぼす学生もいた。
学生たちのストレスは数字にも表れている。関西大が2020年度に実施した調査では、対人関係について4年生の76%が「うまくいっている」「ある程度うまくいっている」と答えたのに対し、1年生は約46%だった。18年度の同学年と比べても、約19%も下がっていた。同大総務局長で常任理事の高岡淳さんはこう説明する。
「コロナ禍で大学に来られないことが如実に表れた。21年度もこうなるのではと懸念します」
■打ちたくても打てない
一方で、感染対策の柱のひとつ、ワクチン接種も進んでいる。同大では学生や教職員などを対象にした職域接種を実施し、約54.9%の学生が1回目の接種を終えたという。都内でも慶應大や青山学院大など多くの大学が職域接種を進めている。