その後もサンペイさんとの縁はつづいた。老人ホーム巡りの取材では、元気に車を運転する老人に刺激されて、自分も習いたいと言いだし、66歳で免許を取得した。このときは「助手席に乗ってくれたのは、女房以外では池ちゃんだけだ」と感謝された。

 パソコンへの挑戦を勧めると、『パソコンの「パ」の字から』という入門書に結実し、これまた大ヒットした。こちらは何年か後に、サンペイさんから手ほどきを受けるという栄に浴している。

 好奇心旺盛、感受性と想像力に富み、集中力のすごかったサンペイさんの余生は、ずいぶん充実したものだった。あの世でも、すてきな女性たちにモテまくっているに違いない。(池辺史生)

サトウサンペイ(本名・佐藤幸一)/1929(昭和4)年、名古屋市に生まれ、大阪で育つ。生家は「佐藤時計製作所」で、京都工業専門学校(現・京都工芸繊維大)卒業後、50年から大阪の大丸百貨店宣伝部に勤務。新大阪新聞の連載でデビュー、57年に退社。上京して65年に朝日新聞夕刊で「フジ三太郎」を開始。91年に終了するまで26年6カ月続いた。本誌での「夕日くん」の連載は68年から84年まで。66年に文春漫画賞、97年紫綬褒章、2017年日本漫画家協会賞特別賞。

週刊朝日  2021年9月3日号

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