ほかにも気遣いから、遠回しに言ったがために墓穴を掘って、余計なひと言になってしまう例は多い。『言いかえ図鑑』にも、こんな例が紹介されている。ある日、残業を頼んだ部下から、こう言われたらどうだろう。
「断ってもいいですか?」
たしかに上司の采配に任せるという意味の言葉になってはいるが、それでも「断らないで残業して」と言える会社は、今どきないだろう。部下はそれをわかっていて、「できるわけないでしょ。それくらい察してよ」という本音をわざわざ遠回しに言ってるだけ……そう掘り下げていくと、かなり感じが悪い。
こういうシーンでは、部下は妙な小細工はせずに「今、別件の締め切りが近いので、お断りさせてください」と言い換えて、シンプルに意思を伝えるのが正解。こねくり回して言うより、きちんと意思表示をするほうが、信頼関係につながっていくことも多いという。
さらにここ数年で登場した、ニューフェースの余計なひと言もある。テレワークが増えたため、リモート会議などでつい言ってしまう言葉だ。
例えば、オンラインの打ち合わせ中、相手の部屋の人の気配が気になったときの「誰かいるんですか?」。リモート会議でプライバシーに言及することは、リモハラ、テレハラ(リモートハラスメント、テレワークハラスメント)とも呼ばれ、禁句となっているからだ。
「家庭は会社と同じ環境ではありません。『ご家族のことで何かあれば、遠慮なく言ってください』と言い換えることで、お互い様の気持ちを伝えるのがいいですね」
こうして、余計なひと言を言ってしまうために、会話クラッシャーや、“場”の瞬間冷却器になってしまいがちな人が、一転好かれる人に変わる方法、それは余計なひと言を、好感ワードに言い換えることだ。
大野さんに教えてもらった言い換え例を頭にたたき込んで、ひねくれキャラを返上、好かれる人を目指そう。あ、余計なひと言ありました?(ライター・福光恵)
※週刊朝日 2022年12月2日号