全壊の場合、基礎支援金が100万円。加算支援金については、住宅の再建方法が建設・購入の場合は200万円、補修の場合は100万円、賃借の場合は50万円。つまり、全壊の住宅を建て直した場合は計300万円が支給される。
大規模半壊の場合は基礎支援金が50万円。加算支援金は全壊と同額が支給される。つまり、大規模半壊の住宅を建て直すと、計250万円が支給される。全壊の場合より50万円も少ない。
義援金の配分にも影響は及んだ。
女性はリフォームした。大規模半壊の住家の改修なので、生活再建支援金の支給額は計150万円。これに熊本豪雨の義援金98万円を足して、女性が公から受け取ったのは計248万円だった。ただ、全壊だった場合、生活再建支援金の計200万円と義援金196万円で計396万円に上る。大規模半壊か全壊かで148万円も違う。
高林教授はこう話す。
「浸水深が数センチ違っても、女性が大規模な補修をしなくてはならないことに変わりはありません。女性は?子定規な対応だと感じていました。リフォームの見積もりは資材価格の高騰もあって、安くて1500万円と工務店から提示されたそうです。支援金は生活再建の重要な資金源です」
数センチ差で支援に差が出るようなトラブルは起こしたくない。全国のボランティア団体でつくる「震災がつなぐ全国ネットワーク」役員の松山文紀さんは、こうアドバイスする。
「被災の状況をあらゆる角度から写真を撮って、必ず証拠を残してください。被害認定に納得できず、2次調査を行うときは、建築士など住宅のプロに立ち会ってもらうのも手です」
■自治体の裁量が大きい
なぜ被害認定の判定は厳しいのだろう。防災学者の室崎益輝・神戸大学名誉教授は言う。
「あくまで指針ですが、内閣府は一定の基準で線を引くため、たった数センチの差で、認定される被害の程度が変わるケースが多々あります。ただ、例えば津波で床上1.8メートル以上浸水したのが一見して明らかな区域では、その地域にある住宅すべてを全壊と判定することもあります。つまり、調査する役所の判断によるところが大きい。被災者支援は自治体の裁量が大きいのです」