インフレ(現金価値の目減り)に勝てる運用を求めれば、相応のリスクを負うことになる。株式などに投資する投資信託(投信)が選択肢の一例だ。実践には「つみたてNISA」という制度を利用し、毎月定額の資金を投じる積み立て投資で臨むことが前提だと藤川さんは述べる。

「つみたてNISA」は毎年40万円ずつ、最長20年にわたり非課税枠が与えられ、その範囲内の投資で得られた利益には税金がかからない。その枠を使い切るには毎月3万3333円が上限になる。月2万円から投資を始めるにはうってつけの制度だ。積み立て投資なら相場変動に関わらず定額の資金を投入することで、結果的に購入単価が平準化され、長く続けるほどリスクを抑えられる。

「例えば、先進国株式の平均的な値動きに連動する投資信託に15年間にわたって積み立て投資を続けた場合、元本割れの確率が8%に低下します」(藤川さん)

 ただし、それでもリスクがゼロでない以上、株式だけにターゲットを絞ることは、本誌読者世代にオススメできないという。株式とともに、安全性の高い債券にも50%ずつ投資するバランス型の投資が無難だと藤川さんはアドバイスする。

「このバランス型なら、10年間の積み立て投資でも元本割れの確率が3%まで低下します。積み立て投資による時間の分散と、投資対象の分散(株式と債券に均等に投資)の効果が働き、リスクが抑えられるのです」

 ここで挙げた元本割れ確率の試算は、藤川さん率いる生活デザインの新サービス「ふくろう倶楽部」に搭載された機能を用いたもの。いくつかの質問に答えると自分に適した資産配分が提案されるロボットアドバイザーと呼ばれるサービスだ。会員登録すれば無料で試算できるので、関心を持った人はサイトにアクセスしてみるといい。

 いずれにしても、日本では収入が増えない中で、物価の上昇が続いているのは紛れもない事実だ。家計のスリム化を中心に暮らしぶりを見直しつつ、リスクを抑えながらの資産運用も検討してみたい。(金融ジャーナリスト・大西洋平)

週刊朝日  2022年12月2日号

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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