「大切なのは、子どもの気持ちを受け止めること。すべてを受け止め切れないかもしれませんが、子どもには真剣に受け止めようと思っているのか、そうでないのかは伝わります」(同)
命の危機に対応する時は決して一人で背負い込まない。専門機関などにつなぐ、つまりKeep safeが重要だ。
■否定しないで聞いて
夏休みが終わり新学期が始まるいまの時期は、1年で最も自殺が増えるといわれる。特に、いじめに悩む子どもたちにはとても苦しい時期だ。しかも今年は長引くコロナ禍のリスクも重なる。すでに今年上半期(1~6月)に自殺した子どもは234人(暫定値)と、昨年同期間の203人を上回り深刻な状況にある。
8月中旬、自身も不登校経験者である「不登校新聞」編集長の石井志昂(しこう)さんは都内で緊急会見を開き、新学期を前に苦しむ子どもの心境をこう説明した。
「落下中より落ちる直前が一番怖いジェットコースターに似た心理です。明日学校が始まってしまうと思うと一気に恐怖感が高まり、悲しい結末になってしまうことがある」
その上で、「学校に行きたくない」は命に関わるSOS、見逃さないでほしいと呼びかけた。
チャイルドラインの小林さんは言う。
「大人は、とにかく子どもの様子をよく見てほしい。いつもと様子が違うとか、心配事がありそうだと感じた時は、『どうしたの』と声をかけ、子どもが話すまでゆっくり待って、否定しないで聞いてあげてほしい」
阪中さんも、こう話す。
「子どもは危機に陥ると視野が狭くなり、救いの手が差しのべられていても気づかなくなってしまいます。ですから普段から声をかけ、わかろうと話を聴くことにより、支える存在が身近にあることを実感させてほしい。その絆が、命の危機のときにつなぎとめる力になります」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2021年9月6日号
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