■関係をビジネスに利用

 そのため陸軍のリハビリテーションセンターで取材を行い、その後にエリザベス女王に会う計画だ。アメリカからカメラクルーが同行するので、女王と王子の笑顔の対面も撮影される。それなら、作品の格は一段と上がり、王子と英王室の絆の固さが際立つ仕上がりになるだろう。

 一方、ダイアナ元妃の命日にあたる8月末日にヘンリー王子メーガンさんの評伝『自由を求めて』改訂版が出版される。再びオミッド・スコビーさんらが著者で、メーガンさんらはかかわっていないとのふれ込みだ。新たに追加された内容には、オプラ・ウィンフリーさんとのインタビュー時に訴えた王室内の人種差別問題に対し、「女王が真摯に応えていない」というさらなる非難などが盛り込まれるという。

 英王室との関係の濃さをアメリカでビジネスに利用する2人。厳しい王室批判を繰り返しながら王室に頼る矛盾は、いったいいつまで続くのだろうか。(ジャーナリスト・多賀幹子)

AERA 2021年9月6日号

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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