映画「その道の向こうに」は、戦地で負傷したエンジニアの女性が故郷で葛藤しながら人生を再生する物語。主人公を演じるのは米国若手俳優で最も期待されるひとり、ジェニファー・ローレンス。彼女とタッグを組んだライラ・ノイゲバウアー監督に聞いた。
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ノイゲバウアーは舞台監督経験を積み、今回が長編映画デビュー作となる。一方、主演のローレンスはハリウッド大作の成功で世界的な知名度が急上昇、メリル・ストリープの再来とも称されるが、「ウィンターズ・ボーン」などインディーズ作品の出身だ。繊細かつ説得力ある演技は評価が高い。今作ではプロデューサーとして制作にも関わる。
──ジェニファーとの共作はいかがでしたか。
「何から何まで喜びにあふれた体験だった。『あなたが彼女のために仕事したのか? それともその逆?』と人によく尋ねられた。答えは、『全てにおいて100%共同作業』。可能な限り最高の映画を一緒に作ろうとした。一対一で向き合って熱中した知的作業であり、深い関係を作り上げることができた」
──主人公リンジーはエンジニアとして参戦し負傷したわけですが、ひと昔前までは考えられないような職業にも女性が就いているという点は重要でしたか?
「従軍する女性を個人的には知らなかったけれど、脚本を読んだときに、驚くほど主人公にひかれた。彼女の心の中で起こっていることに強くコネクトできた。いまや女性が軍事に携わることはそれほど珍しいことではなくなった。制作に先駆け、多くの関係者、女性、男性、脳を負傷した人たちと話す機会があり、志願理由や現場での体験、軍を離れた後の問題などについて聞いた。女性の体験も人によってさまざまだけれど、共通点があるとしたら、『現場では女性はマイノリティーな存在』という点だった。本作はほかにもテーマはあるけれど、主人公が軍務に就いたことによるトラウマを抱えていることは、脚本の重要なポイントだった」
──カメラは、脳を負傷したリンジーの治癒の経過をかなり詳しく追います。どうやってリアルで正確に描いたのですか?
「撮影準備の段階で、時間をかけて、米国退役軍人省の外傷性脳損傷に精通する人や医療のエキスパートたち、作業療法士や理学療法士、神経科医に相談し、負傷した経験を持つ元軍人にも話を聞いた。脚本をもとに、主人公リンジーの具体的な負傷や病状を確定し、それをもとに回復の過程を想定した。そうして建築デザインのように組み立てていった。撮影現場にセラピストがいてアドバイスしてくれた。実際に2人ほど映画にも登場してくれた」