菅義偉首相と小池百合子都知事は、都の宿泊療養施設を訪れ、抗体カクテル療法の実施現場を視察した=8月16日午後、東京都港区(c)朝日新聞社
菅義偉首相と小池百合子都知事は、都の宿泊療養施設を訪れ、抗体カクテル療法の実施現場を視察した=8月16日午後、東京都港区(c)朝日新聞社
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抗体カクテル療法のメカニズム(AERA 2021年9月6日号より)
抗体カクテル療法のメカニズム(AERA 2021年9月6日号より)

 新型コロナウイルスの重症化を防ぐ、軽症者向けの「抗体カクテル療法」に期待感が高まっている。AERA 2021年9月6日号では、メカニズムや対象者、副作用などを解説する。

【イラストで解説】抗体カクテル療法のメカニズムって?

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 7月19日に特例承認された新型コロナウイルス感染症の治療薬「ロナプリーブ」。米国のトランプ前大統領が感染した際に投与を受けた。国内で、軽症感染者にも使える初めての薬だ。臨床試験(治験)では、重症化リスクのある人が重症化するのを防ぐ効果が7割あった。

 米リジェネロンが開発し、中外製薬が販売する。新型コロナウイルスのたんぱく質の活性を抑える(中和する)抗体の中から特に中和活性の高い2種類の中和抗体を組み合わせている。組み合わせなので「抗体カクテル療法」と呼ばれる。

 どちらも、新型コロナウイルスの表面にある突起状のたんぱく質のうち、ヒトの細胞と結合する部位に対する抗体で、ウイルスの増殖を抑え、重症化を防ぐとみられている。

■重症化リスクのある人

 米国など国外で実施された臨床試験では、投与を受けた感染者736人のうち入院が必要になったり死亡したり重症化した人は7人(1.0%)だったのに対し、偽薬の投与を受けた感染者748人では24人(3.2%)で、重症化リスクを減らす効果が70.4%と判断された。ただし、臨床試験の対象となったのは持病があるなどして重症化リスクの高い感染者だけだ。リスクの低い人の効果は確認されていない。

 誰でも投与を受けられるわけではない。酸素投与が必要になってしまったような重い中等症や重症患者は、効果が期待できないばかりか悪化する可能性もあるため対象外だ。軽症や軽い中等症の患者でも、重症化リスクがないとみられる人は効果が不明なため対象外だ。

 対象となる重症化リスクのある感染者は、国内の状況を踏まえ、臨床試験時とは少し異なる。厚生労働省の新型コロナウイルス感染症の「診療の手引き」では、対象となる重症化リスクのある感染者を、65歳以上の高齢者や2型糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、がんなどの疾患をもつ人、BMI30以上の肥満の人、妊娠後期の妊婦などとしている。

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