■初期の投与望ましい

 感染後、なるべく早い時期の投与が望ましい。症状が出始めて8日以上経った人は効果が確認されておらず対象外だ。

 この薬は約30分かけて静脈に点滴する。当初は入院患者が対象だったが、今は宿泊療養施設や臨時投与施設でも投与できるようになった。しかし、感染爆発で各地で医療崩壊が起き、25日、全国の自宅にいる感染者は12万人近くになった。

 自宅での投与を求める声もあるが、松岡雅雄・本大学教授(血液・膠原病・感染症内科)は慎重な投与が必要だと言う。

「頻度は低いが重い副作用が起きることがあるため、万が一の場合にすぐに対処できる医療従事者のいるところで投与した方が安全です。医療従事者が点滴後しばらく経つまで見守ることができるなら自宅でも可能ですが、医療従事者不足の中で現実的には難しいと思います」

 懸念される副作用のひとつは、「インフュージョン・リアクション(輸注反応)」と呼ばれ、悪寒や吐き気、不整脈、発熱、頭痛といった症状が出る。この薬に限らず、遺伝子組み換え技術で作られた「モノクローナル抗体」の点滴で起きることがある。臨床試験では0.2%の人に起きた。点滴中や点滴後24時間以内に起きることが多いという。

 さらに頻度は低いが薬剤成分に対する重いアレルギー反応で、血圧が低下したり呼吸困難になったりするアナフィラキシーが起きる可能性もある。点滴から30分以内に起きることが多い。

 いずれも、適切な対応を速やかにすれば大事に至らない。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年9月6日号