とはいえ、多くのメーカーにとっては手放しで喜べるような状況ではなく、あくまで開幕前と比べれば売れ行きが伸びたに過ぎない、というのが現実のようだ。メーカーは組織委とライセンス契約を結んでいるが、契約上、小売価格の5~7パーセントをロイヤリティー(権利使用料)として組織委員会に支払う必要がある。実際に売れた数ではなく、当初見込んだ製造数に応じた金額となり、すでに組織委に支払っている。見込みより売れなければ、支払い済みのロイヤリティーが“負債”として重くのしかかる上に、大量廃棄という現実にさらされる。
10万点を超すグッズを用意していたあるメーカーの担当者は、現状をこう説明する。
「一時は売り上げがコロナ禍前の10パーセントにまで落ち込みましたが、五輪開幕後は出荷が間に合わないほど、多くのお客様に買っていただきました。ただ、五輪が終わったあたりで売れ行きが下がりました。パラ開幕後に少し盛り返しましたものの、全体の売り上げとしては大会前より少しましになったという状況に過ぎず、このままではたくさんの廃棄が出てしまいます。今回、ネットのショッピングモールや自社のネット通販でのセールも許可されたので、売り上げ増を期待しているところですが、大会中に活用してほしい商品も扱っていたので、もっと早くやりたかったのが本音です」
■売れ行きと廃棄に頭抱える
別のメーカーの役員は、組織委の許可がないため売り上げについての話はできないとしつつも、「五輪が閉幕したあと、店舗での売り上げが落ちたと聞きました。セールをやるならそのタイミングか、せめて9月1日からにするとか。時期が遅すぎると感じます」と不満を隠さなかった。
同じように、「組織委からセールの連絡が来たのは一週間ほど前の話。遅いと思います」と本音を口にするメーカーの営業担当者もいた。
担当者によると、グッズの売り上げはコロナ前に掲げた目標の4割ほど。売れ行きに応じて追加生産をしていく予定だったが、開幕後も追加生産するまでには伸びなかった。