
先ほど触れた安藤百福さんのチキンラーメン開発ストーリーを彷彿させるエピソードだ。日中は試作を続け、夜に帰宅してきたシェアハウスの同居人たちに試食してもらう日々だった。
■パンが売れて東証上場
努力は実った。17年2月、1食で1日に必要な栄養素の3分の1を摂取できる「ベースパスタ」を発売。続く19年3月には完全栄養のパン「ベースブレッド」もリリース。
「パスタの成分構成が確立されてきた時点でパン生地の材料も目安がついていましたが、発酵させて焼く工程が加わることが新たな課題でした。パスタの発売後も5度ほど改良しており、その際に得た知見からベースブレッドを完成させました」
特にベースブレッドが大ヒットし、コンビニやドラッグストアにも置かれるように。22年11月、ベースフード社は創業から約6年半で東証グロース市場に上場を果たした。
橋本さんが完全栄養食を着想したのは、前職時代の食生活への反省がきっかけだという。夜遅くまで働いていたので、夕食の選択肢は限られる。このままの生活を続けると健康を害するのではないかと不安になった。
「栄養バランスのよい食事が大切とわかっていても、仕事を終えてからの自炊は大変。玄米のほうが体にいいとわかっていても、私は白米のほうが味も香りも好きで、続けられなかった」
そもそも、どういった食材をどの程度摂取すれば栄養バランス的に問題がないのか、わからなかった。そこで完全栄養食を作ろうと考えたわけだ。
「ラーメンやあんパン、カレーパンなどは簡単に食べられておいしい。だけど毎日ラーメンや総菜パン、菓子パンだけを食べ続けたら生活習慣病を患うことにもなりかねません。生活習慣病になる人の増加は社会保障の負担が膨らむ原因にもなっているでしょう。主食をイノベーション(技術革新)し、健康を当たり前に。完全栄養の主食により社会保障負担増大という問題の解決を目指しています」