体に必要とされる栄養素をバランスよく取れる完全栄養食。コロナ禍の健康志向の高まりから、2023年にはより浸透することが見込まれる。そんな画期的な食品を世界で初めて生み出したベースフード代表取締役・橋本舜さん。完全栄養食を着想したきっかけ、その先に見据えるものとは。AERA 2023年1月2-9日合併号の記事を紹介する。
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完全栄養食。これは2023年のキーワードになりそうだ。多忙により丁寧な自炊を日々続けられる人は多くない。仕事を長く続けるためにも、プライベートを充実させるためにも、健康でいたい。手軽に食べられる、栄養ばっちりのパンや麺は時代にフィットしている。
世界初の完全栄養食を生み出したのが、ベースフード代表取締役の橋本舜さんだ。開発秘話を聞いていると、「チキンラーメン」や「カップヌードル」を発明した故・安藤百福さんを思い出した。百福さんの孫である日清食品の安藤徳隆社長は“健康”に着目し、「完全栄養食」プロジェクトを推進。22年5月に発売された「完全メシ」の累計出荷数は発売約4カ月で400万食を突破している。
日清のような食品大手が動き出す前から、橋本さんは努力していた。当時住んでいた都内のシェアハウスの台所で100回以上の試作を繰り返し、“完全栄養”のパスタの開発に奮闘していたのである。
完全栄養とは、体に必要とされる栄養素がバランスよく含まれていること。通常のパスタはその大半を糖質が占め、食物繊維やタンパク質は少なめ。
「これがいいんじゃないかと思った材料で麺を作っても、お湯を吸った途端に溶けてなくなってしまう……最初はそんな失敗続きでした。普通のパスタをお湯に投入しても溶けないのはスゴイことなんだなと思いました(笑)。小麦粉と水を用いた製法については何千年もの歴史があるわけです。私は全粒粉や大豆などを使って栄養バランスのいい麺をつくりたかった。スーパーで乾物系の食材を片っ端から買い、エクセルで栄養計算したうえで調合、パスタマシーンで製麺を繰り返しました」