家具が好きなわけでも、インテリアに凝るわけでもなかった。むしろ選ぶのが面倒で家具好きの友人に選んでもらっていた。ただ、買い替えるたびに古い家具を捨てる「使い捨て」には強い抵抗を感じた。そう考えた時、「家具のサブスク」というアイデアが降ってきた。

「初代バチェラーのイケメン社長が、海辺の倉庫で家具を修理する」

 東大、コンサル、資産家、イケメン。スペックで勝負してきた久保が、「ストーリー」を手に入れた。

 ストーリーを持つ起業家の周りにはプロが集まる。取締役CTOの山下博巨はスタートアップを渡り歩いたのち起業し、11年の東日本大震災では被災者と支援者を結ぶサイトで1万件の物資をマッチングさせた凄腕(すごうで)エンジニアだ。19年に加わった法人営業担当の太田博幸は、法人向け家具メーカー大手オリバーの元役員。この道30年のベテランだ。組織をつかさどる中島悠太は、大手会計監査法人トーマツを辞めて加わった。年収は3割減ったが「久保さんが掲げるビジョンとバリューに共感して」と言う。

 もちろんCLASが成功する保証はないが、久保は爽やかに言う。「持たずに利用する文化を定着させたい。暮らしを軽やかにしたい。そのために順調に赤字を掘ってます」

 初代バチェラーは強い覚悟で大きな使命と借金を背負った。

(敬称略)(ジャーナリスト・大西康之)

AERA 2021年9月13日号より抜粋

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