「原作があればキャラデザいらない」が
大誤解である理由

 ここで、アニメの素人である筆者からすると、一つの疑問が生じる。

「原作のマンガがあるなら、キャラデザなんていらなくない?」

 だが、そんなに単純な話ではないと大塚監督は説く。

「確かに原作マンガがある場合は、ゼロからキャラクターを生み出す必要はありません。でも、マンガの絵をそのままアニメに使うことは不可能なのです」

「アニメの絵は、たくさんのアニメーターが分業によって描きます。統一された設計図(手本)となるキャラデザがないまま、各アニメーターがマンガの絵を参考に、個人のセンスでアニメ用の絵に描き直した場合、ビックリするくらいバラバラの絵が上がってきてしまうでしょう」

 テレビアニメ1話には、50人~100人程度のアニメーターが携わる。画力や絵のクセは人それぞれ。キャラデザという手本がなければ、絵をつないで映像にしたとき、一人のキャラクターとして成立しなくなってしまうのだ。

 だからこそ、頭身や顔のバランス、表情や衣装、所持しているアイテムなどを「アニメ仕様」に描き直したキャラデザを一つ設けて、「このように描いてください」という手本にしてもらう必要があるのだ。

マンガの絵がアニメで使えない
もう一つの理由

 大塚監督によると、マンガの絵がそのままアニメに使えない理由はもう一つある。

「アニメの絵は『動く』ので、動かしやすいデザインにする必要があります。一方、マンガの絵は動かすことを前提にしていないため、作画の線が多い傾向にあります。作画の線が多いと、アニメーターがキャラを描いて動かすとき、必要以上に手間がかかってしまうのです」

「そのためキャラクターデザインでは、原作マンガの魅力を損なわないように注意しながら、作画の線をできるだけ削り、アニメでも使える絵にデザインし直すのです」

 わかりやすい例が、『美少女戦士セーラームーン』だ。原作が手元にない人はぜひ書店に行って、マンガとアニメの絵を見比べてみてほしい。

 マンガの絵は、まるで絵画のように緻密に描きこまれているが、アニメの世界で「動かす」ことには向いていない。「この絵をアニメにそのまま使うのは不可能だ」と大塚監督はいう。

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ
原作者のマンガ家とトラブルになることも…