※写真はイメージです(GettyImages)
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 マンガがアニメ化されたとき、「あれ?ちょっとマンガの絵と違う…」と感じることはないだろうか。原作の熱狂的なファンなら、それだけで「クソアニメだ!」と認定してしまうことも。しかし、プロの視点では「マンガの絵をそのままアニメに使うことは難しい」という。劇場版『ONE PIECE』やTVアニメ『プリキュア』シリーズを担当した経験を持ち、書籍『アニメができるまで』を上梓した大塚隆史監督に、マンガのキャラをアニメ仕様に「変身」させる作業の裏話を聞いた。(執筆/フリーライター 堀田孝之、取材協力/アニメ監督 大塚隆史)

キャラクターデザインは
実写における「俳優のキャスティング」

 アニメの印象を一瞬で決定づけるのは、登場するキャラがどんな絵で描かれているかだ。どんなに物語が素晴らしくても、どんなに音楽がカッコ良くても、キャラが魅力的でなければ視聴者の心をつかむことはできない。

 アニメのキャラクターの絵柄を決める仕事は、「キャラクターデザイン(通称:キャラデザ)」と呼ばれる。作品の人気や成否を大きく左右するため、アニメーター(作画担当者)のキャリアの中でも特に重要な仕事の一つだ。

 キャラデザの醍醐味について、劇場版『ONE PIECE』やTVアニメ『プリキュア』シリーズを手掛けた経験を持つ大塚隆史監督は次のように説明する。

「キャラデザは、実写における『俳優のキャスティング』だと捉えると、その重要性がわかると思います。実写において、どんな姿や格好をした俳優が出演をするかは、作品の魅力を左右する最重要事項の一つですから」(大塚監督、以下同)

 アニメの世界での「俳優」といえば、「声優」をイメージする人がいるかもしれない。だが、実写における俳優とアニメにおける声優はイコールではないと大塚監督は話す。

「実写だと、『外見・芝居・声』の3要素を、一人の俳優がまとめて担当します。一方アニメでは、キャラクターデザイナーがキャラの『外見』を生み出し、アニメーターがキャラに『芝居』をさせ、声優がキャラに『声』を与えます。さまざまな人の分業によって、ようやく一人のキャラクターが誕生する、と考えればいいでしょう」

 そう考えてみると、キャラデザの重要性がよくわかる。どんなにいい芝居や声をしていても、「外見がパッとしない」キャラクターでは、アニメの魅力は半減してしまうだろう。

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「原作があればキャラデザいらない」が 大誤解である理由