東京地検特捜部が9月8日、日本大学本部や関連会社、日大事業部(本社・東京都)などを背任容疑で家宅捜索した事件が政界に波紋を広げている。
問題となっているのは、2020年に日大医学部付属板橋病院の建て替え工事の設計について。S計画社に発注し、契約金額は24億円だったが、うち2億円が不当に外部流出した疑いが持たれている。特捜部の捜索は、日大の田中英寿理事長の自宅や側近とされる井ノ口忠男理事の関係先まで及んでいた。
「カギとみているのは井ノ口氏だ。田中氏の意をくんで、大阪の医療法人関連会社を通じて2億円を流出させた可能性がある」捜査関係者)
井ノ口氏は、2018年の日大アメリカンフットボール部の悪質タックル問題で、選手らに口封じをしたと第三者委員会に認定された人物。責任をとって日大理事、日大事業部役員からいったん退いたが、再び理事、役員に復帰していた。
「病院を巡る疑惑は学内から以前からささやかれていた。辞めたはずの井ノ口氏がすぐに理事に復帰なんてあり得ない。おまけに2億円の金が流出なんて驚いた。危険タックルの時と同じく、田中理事長の側近が”密室”で決めてしまうガバナンスの機能不全の体質です」(日大関係者)
そして井ノ口氏とともに2億円流出に関与したと疑われているのが、大阪の医療法人A会の関連のX社(本社・大阪市)とZ社(本社・東京都港区)だ。いずれも東京地検特捜部が捜索に入っている。
A会は、関西では指折りの医療法人として知られる。B理事長は日大相撲部OBで大相撲の人気力士の後援会会長などを務める。日大のホームページには、田中理事長や井ノ口氏とB理事長の記念写真が載っている。
「医療法人の経営に精通しているB氏やその関連会社が日大側に助言などをして、A会関連会社を通じ、2億円を流出させたのではないか。Z社が2億円の受け皿となっている可能性がある」(捜査関係者)
さらにB理事長は政治家との幅広い交友も注目されている。