■投手の印象が強かった
1位投票が集まらなかった理由は、「投手・大谷」が活躍した印象が強かったのも一つの要因かもしれない。
昨年は投手で9勝2敗、防御率3.18、打者で打率2割5分7厘、46本塁打、100打点。今年の成績と比較すると、投手で6勝を上積みし、防御率も大幅に改善した。大リーグで自身初の規定投球回数にも到達した。一方、打撃成績は昨年より本塁打を12本減らしたが、打率は1分6厘上がっている。グリーンバーグ記者の指摘通り、今年は投打でステップアップしているように感じる。
ところが、大谷を取材するスポーツ紙記者は違う見方を示す。
「米国の野球ファンは本塁打が野球の一番の華だと思っています。大谷は昨年、シーズン終盤まで熾烈(しれつ)な本塁打王争いを繰り広げた。ホームランアーティストとしての活躍が大きなインパクトを残したと思います。今年は投手で申し分ない成績を残していますが、MVPは打者が選ばれやすい傾向がある。投手はサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)があるのですみ分けができている感じがします。実際にア・リーグで投手がMVPに選ばれたのは11年にタイガースで活躍したジャスティン・バーランダー(39)までさかのぼります。二刀流でこれほどの成績を残した選手が過去にいなかったので、大谷が残した数字にどれほどの価値があるのか判断基準が難しい部分もある。その功績が評価される時代はもう少し後かもしれません」
来年はどんな活躍を見せるか。MVPを獲得できなくても、最もパフォーマンスが注目される選手である事実は変わらない。(ライター・今川秀悟)
※AERA 2022年11月28日号