特に13日の試合は0対1の9回表、1死一、二塁からセカンドゴロで封殺されたはずの一塁走者が挟まれ、その間に三塁に進んでいた二塁走者が本塁を狙って憤死。さらに中日側のリクエストで二塁封殺が認められて試合終了という、なんとも後味の悪い幕切れになった。

 だが、先のミーティングで選手たちに「何かあったら僕が出ていくから」と宣言していた指揮官は、簡単には引き下がらなかった。ベンチを飛び出して審判団に説明を求め、およそ15分にわたって抗議。大きな身振りを交え、時に激しい口調で迫る高津監督をダグアウトから見つめるナインの姿は「一枚岩」そのものに映った。

 しかし悪い流れは止まらず、再び神宮に戻って行われた阪神との2連戦の初戦は、9回表に守護神のスコット・マクガフが同点3ランを浴びて手痛い引き分け。それでも「(昨年と比べて)変わった部分はたくさんあると思います。技術的なこともそうですし、精神的なこともそうですし、強くなったことはたくさんあるのかなと思います」と指揮官が評していた「チームスワローズ」は、そのままズルズルいくことはなかった。

 一夜明けた翌15日の同カード。7月に新型コロナウイルス陽性判定を受け、五輪開催に伴うシーズン中断期間が明けても精彩を欠いていた開幕投手の小川泰弘が、気迫のピッチングで8回途中まで零封。セットアッパーの清水昇が二死満塁のピンチをフォークの連投で切り抜けると、9回はマクガフが阪神打線を三者凡退に抑え、初回に村上宗隆のタイムリーで挙げた1点を完封リレーで守りきった。

 高津監督のいう「強くなった」ヤクルトを象徴するような“スミイチ”での勝利。前夜の悪夢を払拭してみせたマクガフの体をグッと引き寄せてハグした指揮官は、その後の会見でも守護神をねぎらった。

「難しかったと思います。どの1点差ゲームよりも難しい1対0だと思うので、そこに上がっていく9回のマウンドは勇気が要ったと思いますし、昨日の今日だったんでね。全ては今日抑えたことが、チャラにはならないですけどね、気分を晴らしてくれるんじゃないかなと思います」

 おそらくはそのマクガフのみならず、先発した小川も中継ぎの清水も、いや、あの甲子園で指揮官に「絶対大丈夫」という言葉を直接、吹き込まれた選手は誰もが、その5文字を胸に刻んで試合に臨んでいたはずだ。それはこの先も変わることはないだろう。

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高津監督も口にした「優勝」の2文字